【菊花賞】アスクビクターモア猛追しのいでV 最後の一冠つかんだ執念とは

鼻差の激戦となった菊花賞のゴール前。接戦を制したアスクビクターモア(奥)と2着のボルドグフーシュ
鼻差の激戦となった菊花賞のゴール前。接戦を制したアスクビクターモア(奥)と2着のボルドグフーシュ

◆第83回菊花賞・G1(10月23日、阪神・芝3000メートル、良)

 クラシック3冠の最後を飾る第83回菊花賞・G1は23日、阪神競馬場で行われ、2番人気のアスクビクターモアが後続を鼻差しのぎきり、レコード勝ち。速い流れを早めに仕掛ける田辺裕信騎手(38)の強気のレース運びで、春の惜敗を糧に最後の1冠をつかんだ。1番人気のガイアフォースは8着に敗れ、G1での1番人気の連敗は16に伸びた。

 迷いはない。田辺とアスクビクターモアが4コーナー手前で勝負に出た。前半5ハロン58秒7の速いペースで逃げるセイウンハーデスに早々と馬体を並べると、一気にギアを上げた。「もうちょっと楽に振り切れるかなと思って、ヒヤッとしましたね」

 手綱を動かし、直線入り口では後続に4馬身近い差をつけた。しかし、ラスト1ハロン過ぎから徐々に近づいてくるボルドグフーシュとジャスティンパレスの蹄音。脅威を振り払うように右腕でステッキを入れ、左腕で精いっぱい手綱を押す。最後はボルドグフーシュと馬体を並べたゴール板。何とか鼻差の接戦を制した。

 春2冠の連対馬不在のなかで圧巻のレコードVは、実は青写真通りだった。発走4時間前の4R終了後。田村調教師にこう背中を押された。「馬の力は一枚も二枚も上だから、思い切って行ってこい」。春の2冠で5、3着と惜敗した悔しさを胸に、勝利しか見ていなかった大舞台。「覚悟がさらに強くなりました。馬の力を信じて、自分から動かしに行ったけど、よくしのいでくれました」と満足そうに振り返った。

 田村師にとっても悲願の勝利だ。昨年9月の初勝利時から「クラシックに乗せられる」と期待したディープインパクト産駒。特に日本ダービーは過去のVTRをすべて見て、分析したうえで想定したVタイムで走りながら敗れた。その上位2頭が不在の今回もライバルたちのレースを細かくチェック。「最後のここが勝負だと思っていた」戦いで執念が実を結び「うれしいです」と笑みを浮かべた。

 今後は未定だが、広崎利洋オーナーは「一番合うのは中山だからね」と有馬記念(12月25日、中山)参戦を示唆。田辺も「若い馬ですし、強い馬と戦うことも多々あると思いますけど、パワーアップして、もっともっとG1を勝ってほしい」と期待を寄せる。着差は鼻でも力の違いを見せつけた“圧勝劇”を自信に、古馬との戦いに打って出る。(山本 武志)

 ◆アスクビクターモア 父ディープインパクト、母カルティカ(父レインボウクウェスト)。美浦・田村康仁厩舎所属の牡3歳。北海道千歳市・社台ファームの生産。通算9戦4勝。総獲得賞金は3億4527万5000円。主な勝ち鞍は報知杯弥生賞ディープインパクト記念・G2(22年)。馬主は広崎利洋HD(株)。

 〈広崎オーナー地元でG1制覇〉

 ○…西宮市出身の広崎オーナーは、15年桜花賞(レッツゴードンキ)以来となる地元でのG1勝利。「もう(阪神での)菊花賞はないからね。すごいプレゼント」と満面の笑みを浮かべた。

 〈母系譲りのスタミナ称賛〉

 ○…社台ファームの吉田照哉代表は「距離は心配していたが、母父のレインボウクウェストが良かったのかも」と85年の凱旋門賞馬譲りのスタミナをたたえた。母カルティカは、初子ケマーの欧州マイルG1勝利を機に購入し、1歳世代のキズナ産駒牝馬も「いい子ですよ」。ディープインパクト産駒は2歳世代がラストクロップで「そういう状況で、こういう馬が出てきたのはうれしい」と笑みを浮かべた。

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