◆第42回ジャパンC・G1(11月27日、東京競馬場・芝2400メートル)
ジャパンCにドイツから参戦のテュネスには、スタッフとして寺地秀一騎手(26)が帯同。日本を離れ、同国で活躍するジョッキーが思いを語った。
柔和な表情とは裏腹に、心には情熱と覚悟を詰め込んでいる。22日、東京競馬場で調整されるテュネスを見守った寺地は「観客として来たことはあったけど、今回は騎手と同じパドックに入れるし、騎手目線を感じられる。世界のトップ騎手がいて、その雰囲気を味わえるのは貴重な体験」と興奮気味に話した。
小3で乗馬を始めると、すぐに取りつかれた。中3からJRAの騎手課程を受け始めたものの、4度不合格になった。「何かが足りない」。14年4月に渡欧し米国、ドイツと渡り歩きながら20年8月にドイツでジョッキーになった。
11年の凱旋門賞馬デインドリームを育てた名門シールゲン厩舎に、今年から所属。異国の地で自身を探し、足りないピースを埋め、今年は12勝を挙げ、リーディング20位前後につける。「4回試験に落ちたけど、今は良かったと思う。直線に入って追い切る力だったり、道中のポジショニング。そういうものの大事さに気づかされたし、自分の意見もはっきり伝えられるようになった。まだまだですが一つ一つ見つけていきたい」。
青写真がある。テュネスに騎乗するドイツのトップ騎手ムルザバエフの力強い追い方、愛馬の半兄で凱旋門賞を制したトルカータータッソの主戦だったピーヒュレクの美しい騎乗フォームの習得を目指しているが、「そういう騎乗ができるようになったら、日本で騎手になりたい。早ければ3年後、挑戦したい」と心に誓う。大志を抱く26歳は、母国での経験を糧に夢をたぐり寄せていく。(松末 守司)
◆寺地 秀一(てらち・しゅういち)1995年12月23日生まれ。26歳。岡山県出身。14年4月、19歳で渡欧し、マーク・プレスコット厩舎(英国)などに所属。米国に拠点を移したが騎手になれず、19年8月にドイツに渡り20年8月に騎手デビュー。1年目は3勝だったが、21年は23勝を挙げ、同国リーディング14位。