【中山大障害】長山尚義オーナーが「障害絶対王者」オジュウチョウサンの引き際悟った瞬間とは…

JG1の勝利数を示す★がズラリと並ぶ調教用ゼッケン
JG1の勝利数を示す★がズラリと並ぶ調教用ゼッケン

◆第145回中山大障害・JG1(12月24日、中山競馬場・障直芝4100メートル)

 第145回中山大障害(24日、中山)で障害絶対王者として一時代を築いた11歳のオジュウチョウサンが、ついにラストランを迎える。不滅のJ・G19勝を誇る名ジャンパーは、果たして連覇で有終の美を飾れるのか。引退レースに向かう舞台裏を「ラストジャンプ」と題して、3回にわたって連載する。

 引退の決断は突然だった。今年春に中山グランドジャンプを制して、日本馬史上最年長重賞Vを成し遂げたオジュウチョウサンは、秋の始動戦だった前走の東京ハイジャンプで9着という思わぬ大敗を喫した。障害戦で着外に敗れたのは、15年の中山大障害(6着)以来、7年ぶりの屈辱だった。勝利を期待していたオーナーの長山尚義も、予想外の結果に肩を落として競馬場を後にした。

 父ステイゴールド譲りの晩成型の底力を見込み、「12、13歳でも勝てると思っている。目標に全力投球すれば、まだまだやれる」という確信を持っていた。しかし帰路につく電車の中で、長山はショッキングな光景を目にした。オジュウチョウサンのぬいぐるみを抱えた小学生くらいの子供が、「チョウサンが負けた」と泣いていたのだ。それも一人ではない。「大人の理屈じゃない」という思いがわき起こった。

 レースは前半から位置取りが悪く、さらに飛越が不安定な馬の後ろに入ってリズムに乗れなかった。さらに鞍上の石神深一が「ひっくり返ってもおかしくなかった」と、2周目の2つ目の障害で痛恨のミス。いつもは510キロ前後の馬体重だったが、前走から8キロ減の502キロと調整もうまくいかず、不可解な敗戦ではなかった。石神自身も「あくまでけがさえしなければ、元気ですし、来年でも一線級と戦える気がする」と語るように、オーナーの考えは独りよがりのものではなかったが…。

 調教用ゼッケンにはJG19勝を示す星印が輝く。絶対に負けてはいけない子供たちのヒーローが、時として敗れてしまう現実―。「そこで俺は初めて引退を覚悟したよ」。長山の心が揺れた。引き際を悟り、暮れの中山大障害での引退が決まった瞬間だった。そして11歳を迎えたオジュウチョウサンにも、明らかな変化が起きていた。=敬称略=(坂本 達洋)

 ◆オジュウチョウサン 父ステイゴールド、母シャドウシルエット(父シンボリクリスエス)。美浦・和田正一郎厩舎所属の牡11歳。北海道平取町・坂東牧場の生産。通算39戦20勝(うち障害31戦18勝)。総獲得賞金は9億4137万7000円(うち障害9億1545万7000円)。重賞は中山グランドジャンプ6勝、中山大障害3勝(いずれもJ・G1)を含む障害15勝。18年夏から平地との異例の“二刀流”にも挑戦して、同年末の有馬記念にファン投票3位の10万382票で出走して、5番人気で0秒8差の9着に健闘。馬主名義は(株)チョウサン。

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