【高松宮記念】「短距離王国」築いた安田隆行調教師、来年2月定年を前に成長株アグリでラストイヤー飾る

4連勝とメンバー最高の勢いでG1に初挑戦するアグリ
4連勝とメンバー最高の勢いでG1に初挑戦するアグリ
安田隆行調教師
安田隆行調教師

◆第53回高松宮記念・G1(3月26日、中京競馬場・芝1200メートル)

 第53回高松宮記念・G1(26日、中京)は、来年2月末で定年引退する安田隆行調教師(70)=栗東=にとって最後の春のスプリントG1だ。同G1は単独最多の3勝。いずれも思い入れある名馬での勝利だった。最終章で送り込むのは4歳の成長株アグリ。1勝クラスから怒とうの4連勝で前走の阪急杯を制し、最高潮の勢いでG1初挑戦を迎える。

 単独最多3勝の高松宮記念のみならず、スプリンターズSでも最多タイの3勝を挙げ、安田隆調教師は「短距離王国」の名を欲しいままにしてきた。「(未勝利の)クラシックだって勝ちたいですよ」とおどけるが、一方で「たまたま、偶然。それでも『短距離の安田隆』と呼ばれるのはうれしい」と目を細める。春のスプリントG1はやはり、思い入れのある戦いの一つだ。

 初制覇は12年のカレンチャン。タイトルを勝ち取ったにもかかわらず、「あの年は4頭出し。本当はワンツースリーを狙ったんだけど」と振り返る。とはいえ、18頭立てで全頭が1ケタの《1》〈3〉〈4〉〈8〉着。「自分でもすごいことだったと思う。カレンチャンは(11年スプリンターズSと)G1を2つ勝たせてくれて、うれしかった」と懐かしむ。

 続く13年は前年3着のロードカナロア。前年秋のスプリンターズSと香港スプリントで連続してカレンチャンに雪辱したのに続き、G13連勝で短距離王の地位を不動のものとした。「カレンチャンに負けてから、何かを感じたんだろうね。すごくたくましくなって、レース前も何の心配もしていなかった」。見立て通りのレコードV。「僕はカナロア産駒でいま92勝しているんだけど、辞めるまでに100勝まで伸ばしたい」と、種牡馬となったカナロア産駒の活躍も発奮材料にしている。

 21年のダノンスマッシュVは重馬場の激戦だった。「20年も重馬場でだめ(10着)だったから心配していました」と明かすが、杞憂(きゆう)に終わり、レース後は二重の感激に包まれた。一つはロードカナロアとの父子制覇、もう一つはから巣立った川田将雅との勝利。「彼が今は日本のトップになってくれた。それが何よりですよ」。昨年初めてリーディングを獲得するまでに成長した弟子との栄冠は、格別の喜びだった。

 今年は目覚ましい成長を見せるアグリでの参戦。重賞初挑戦の阪急杯前には「まだ緩いところがある」とみていたが、終わってみれば4連勝でのタイトル奪取と、最高の流れに乗った。「いい馬で参加できることがありがたい。相手がさらに強くなるから大きなことは言えませんが、1週前の追い切りもよかったですから、楽しみです」と初のG1挑戦にも信頼は揺るがない。「来年も無理を言って高松宮記念に出させてもらおうかな。そう思うくらいのレース」。ラストイヤーのG1開幕。有終の1年に向けて、これ以上ふさわしい舞台はない。(山下 優)

 ◆安田 隆行(やすだ・たかゆき)1953年3月5日、京都府生まれ。70歳。72年に騎手としてデビュー。トウカイテイオーとのコンビで91年皐月賞、日本ダービーのG1・2勝を挙げ、94年に調教師免許を取得してJRA通算680勝で引退した。翌95年に栗東トレセンで開業し、19年にリーディング。21日現在、JRA通算7977戦942勝(うちG1・14勝を含む重賞57勝)。海外G1はロードカナロア、ダノンスマッシュでの香港スプリント3勝。

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