【皐月賞】ファントムシーフの谷川牧場「皐月賞だけとってない」42年ぶり牡馬クラシック制覇で夢かなえる

僚馬と馬体を併せてキャンター調整されるファントムシーフ(右)
僚馬と馬体を併せてキャンター調整されるファントムシーフ(右)

◆第83回皐月賞・G1(4月16日、中山競馬場・芝2000メートル)

 第83回皐月賞(16日、中山)に有力馬の1頭、ファントムシーフは生産した谷川牧場にとって、42年ぶりの牡馬クラシック制覇がかかる一戦。父を継いだ谷川貴英社長(58)が試行錯誤しながらたどり着いた努力の結晶を、皐月賞初制覇にぶつける。

 タケホープで73年日本ダービー、ミナガワマンナで81年菊花賞を制している谷川牧場だが、皐月賞はまだ手にしていない。谷川社長にとっても牡馬クラシック制覇は約40年前の記憶。当時はまだ高校生だった。

 「第2次反抗期で、(当時社長だった)父と口をきかない状態でした。ただ、牧場の息子ですから菊花賞はやっぱり楽しみにしていました。事務所のテレビで父と少し離れて見ていました。勝った瞬間、抱き合いはしなかったけど初めて握手をしました」

 大学卒業後、86年ジャパンCを制したジュピターアイランドを管理したイギリスのクライヴ・ブリテン厩舎と、生産牧場のビーチハウススタッドで修行。89年に牧場の専務に就任した後、92年に社長となった。当時は成績が安定しなかったが94年にチョウカイキャロルがオークス制覇。自らの生産馬でG1初勝利だった。

 「(実質的に業務を取り仕切るようになった)89年は年間30勝して、生産者ランキングでも8位。でも翌年からガクッと下がって、4勝しかしない年もあり、何が悪いのかホントに悩みましたね。(チョウカイキャロルのオークスVは)うれしくてうれしくて、口取りでは馬主さんより馬の近くに割って入ってましたね(笑い)。ただ、どうして勝てたのかは分かりませんでした」

 試行錯誤のなか、5年に1度はアメリカに繁殖牝馬を買いに行った。20年前からは3年に1度。徐々にスパンが短くなって毎年買うようになった。

 「今考えると、繁殖の入れ替えがおろそかでした。5、6年前からは年間2、3頭買うようになって、その子供たちが成績を出してくれています」

 共同通信杯を勝って臨むファントムシーフは17年の英国タタソールズでの繁殖牝馬セールで購入した母ルパン2の2番子。努力が実を結んだ結晶体だ。特に皐月賞は思いが強いレースでもある。ルパン2を購入した17年の春。3戦3勝でフラワーCを制したファンディーナで牝馬ながら果敢に挑戦したが、1番人気で7着と苦い敗戦を喫した。

 「楽に3連勝して、桜花賞まで中2週だったこともあり挑戦しました。ただ、かわいそうなぐらいマークされて過酷なレースになってしまい、馬には申し訳ないことをしました」

 大混戦とされている今年の皐月賞に、創業112年目の名門牧場が送り出す堂々たる主役の1頭。ファンディーナと同じターフ・スポートの勝負服で当然、思い入れもある。

 「ホープフルSで4着だったので、舞台に関してはやってみないと分かりません。前走はスタートも行きっぷりも良くなっていたので、前に行けたらもしかしたらチャンスはあるのかなと思っています。皐月賞だけ3冠でとってないレースですし、夢を果たしたいですが、G1は縁とか運とかすべてかみ合えば…です。まずは無事に走ってきてもらって、クラブにも何とかG1初勝利をもたらしてもらいたいです」(取材・構成 玉木宏征)

 ◆谷川牧場 1912年創業。北海道・浦河町にある競走馬の生産、育成などを行う牧場。ハイセイコーの宿敵タケホープで73年日本ダービーを初制覇。けい養していた5冠馬シンザンの子ミナガワマンナで81年菊花賞を制覇。2002年から谷川貴英氏が代表。繁殖牝馬は預託も含めて60頭以上。従業員は32名(11日現在)。先代の弘一郎氏は浦河町長を5期20年務めた。

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