◆第28回NHKマイルC・G1(5月7日、東京・芝1600メートル)
第28回NHKマイルC(7日、東京)で、エエヤンがオーナーと伊藤大調教師に初のJRA・G1タイトルをプレゼントする。前走で初重賞をゲットし、有力馬の一頭に名乗り。セールで一目ぼれされた逸材が4連勝で頂点をつかむ。
ニュージーランドTの覇者エエヤンが、初めて夢舞台に挑む。今年1月には未勝利だった馬が、そこからたった3か月でG2を制し、主役に躍り出た。その前走は出して行ったときに少々かかったが、その後はしっかりと収まり、早め先頭から押し切る横綱相撲で重賞初勝利を果たした。伊藤大調教師は「もともと能力はあると思っていた。3連勝しても、うまくいっているな、くらい。想定内の結果です」とさらりと言ってのけた。
自身を持つ、言い換えれば我が強い馬。ただ、そこを伸ばすことで、気持ちの強さを最大の武器に変えてきた。個性を長所ととらえ、育てるのは厩舎の方針でもあるが、伊藤大師は「追い切りの時に気持ちが入ってグンと行くようなところはあるけど、普段はそこまでではない。ただ、そこがセールスポイント。無理には矯正したくない。普段から助手にはやんちゃな面を出しても、けんかをする必要はないと言っています。馬が走りたいように走らせています」と常に馬の心に寄り添い、成長を促してきた。
出会いは21年の北海道セレクションセール。「動きがすごかった」(同師)と一目ぼれしたが、それはニッシンホールディングスの山住勲オーナーも一緒だった。09年の開業と同氏の馬主資格取得がほぼ同時期という縁。「俺がお前を育ててやる」と言ってくれたオーナーと歩み、夢を追い続け、ともに初のG1勝利を目指すところまできた。「オーナーの初めての重賞がうちで良かった。一緒になって探した馬でこういう舞台を目指せる。そういう人といけるというので恩返しの気持ちです」と同師。
状態も万全だ。前走後に滋賀・チャンピオンズヒルズに放牧に出るのはいつものパターン。リフレッシュを促してから21日に帰厩し、1週前追い切りは美浦・坂路単走で56秒9―13秒5をマークした。無理することはなかったが、確かな脚取りで駆け抜けた。
舞台の東京マイルは「絶好の舞台。スピードもあってスタミナもある」と自信。「エエヤンらしいレースをしてくれて、最後にみんながええやんって結果になってくれればエエヤン!」と最後まで軽快だったトレーナー。頂上決戦でも、エエヤンな走りで連勝街道を行く。(松末 守司)
◆伊藤 大士(いとう・だいし)1972年11月29日、愛知県出身。50歳。09年に開業。初出走は、同年5月23日の新潟8R(マイネアクトナイン12着)。JRA通算181勝(23年4月30日現在)。重賞は今年のニュージーランドTのほか、20年ダイヤモンドS・G3(ミライヘノツバサ)。