【マイルCS】史上初「当日代打」でG1制覇の藤岡康太騎手「さらに頑張りたい気持ちになりました。帰って子供を風呂に入れないと」今年第一子誕生

4コーナー最後方から鮮やかに差し切ったナミュール(左)(カメラ・石田 順平)
4コーナー最後方から鮮やかに差し切ったナミュール(左)(カメラ・石田 順平)
14年ぶりのG1勝利に満面の笑みを浮かべる藤岡康
14年ぶりのG1勝利に満面の笑みを浮かべる藤岡康

◆第40回マイルCS・G1(11月19日、京都・芝1600メートル、良)

 第40回マイルCSは19日、京都競馬場で開催され、唯一の牝馬で5番人気のナミュールが8度目のG1挑戦で悲願の初制覇を飾った。紅一点の牝馬がG1級レースを勝つのは史上9度目(8頭目)。アーモンドアイ、ウオッカ、エアグルーヴなどの名牝に肩を並べる偉業となった。藤岡康太騎手(34)=栗東・フリー=は急きょの乗り替わりで自身14年ぶりのG1・2勝目。騎手変更のG1勝利は10年ぶり2度目で、当日変更では史上初の快挙だった。

 残り200メートル。最後尾で4コーナーを迎えたナミュールの前には、まだ10頭以上のライバルがいた。進路を探す藤岡康が外に誘導した際に他馬とぶつかるが、そこで闘争心が点火。右手前に替えて一気に加速すると、全身を使ったフットワークで豪快に伸び、ゴール前で首差だけ前に出た。鞍上は「抜け出す時にちょっと迷惑をかけてしまいました」と反省しつつ、「厩舎の方々の顔を見た時に自然と出ていました」と、会心のガッツポーズで検量室前に引き揚げてきた。

 当初騎乗する予定だったムーアが2Rで落馬負傷。昼休みに急きょ大役を知らされたが、慌てはしなかった。前走で騎乗していたモレイラから話を聞き、映像もチェック。代打の責任をこれ以上ない形で全うした。「ホッとしましたが、時間がたつにつれてうれしさが込みあげてきました」。緊張から解放され、レース30分後には自然な笑みに変わっていた。

 G1で5番人気以内の馬に乗るのは約8年半ぶり。しかし一流厩舎から調教を依頼されるなど腕は確かで、腐らず献身に向き合ってきた34歳に、競馬の神様はご褒美を用意していた。「若い時に勝たせていただいて、年数がたつごとにG1を勝つ重みを感じていました」と、09年NHKマイルC(ジョーカプチーノ)以来の美酒に酔いしれた。今年は第一子も生まれ、より責任感が出てきたタイミングでの勝利に「さらに頑張りたい気持ちになりました。帰って子供を風呂に入れないと」と、穏やかな表情で競馬場を後にした。

 高野調教師も「短い時間でしたが結構細かく打ち合わせができて、パドックで馬に乗せる時には『もう任せる』という感覚でした。よくやってくれました」と感謝。自身は15年ジャパンCのショウナンパンドラ、21年大阪杯のレイパパレなど牡牝混合戦も含め、JRA・G1全5勝が牝馬だ。「明確な答えはありません。男馬でも結果を出さないと」と首をかしげつつも、上機嫌だった。

 1984年のグレード制導入前も含め、紅一点でのG1級勝利は9度目(8頭目)。高野師は「キャロットクラブの先輩であるリスグラシューのような成長曲線を描ければと思っていました。一歩近づきましたかね」と胸を張った。ハービンジャー産駒の4歳が歴史に残る偉業を成し遂げ、名牝の道を歩み始めた。(玉木 宏征)

 ◆ナミュール 父ハービンジャー、母サンブルエミューズ(父ダイワメジャー)。栗東・高野友和厩舎所属の牝4歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算13戦5勝。総獲得賞金は4億3655万1000円。重賞3勝目。主な勝ち鞍は22年チューリップ賞、23年富士S(ともにG2)。馬主は(有)キャロットファーム。

 〈ノーザンFが新記録となるJRA・G1・11連勝〉ナミュールの生産者ノーザンファームが新たな金字塔を打ち立てた。マイルCSの勝利で、今年のヴィクトリアマイルからJRA・G1・11連勝。同ファームが19年の秋華賞から有馬記念にかけて達成した10連勝の最多記録を更新した。吉田勝己代表は「すごいね」と、満面の笑みを見せた。

 ナミュールのG1初勝利には「4コーナーで一番後ろだったでしょ。あっと言う間に来ましたね」と、しまいの豪脚に驚きの表情。「あの位置でじっとしていたのも良かったのだろうけど、ここまで脚が違うとは。信じられない」と感嘆の様子だった。

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