【マーメイドS】デビュー1年で美浦から栗東に移籍した西塚洸二騎手 反省も胸にホールネスで恩返しV狙う   

マーメイドSに挑むガッツポーズの西塚洸二騎手とホールネス
マーメイドSに挑むガッツポーズの西塚洸二騎手とホールネス
ホールネスとマーメイドSに挑む西塚洸二騎手
ホールネスとマーメイドSに挑む西塚洸二騎手

◆第29回マーメイドS・G3(6月16日、京都・芝2000メートル)

 22年3月に美浦・鹿戸厩舎からデビューした西塚洸二騎手。23年3月からは栗東・藤原厩舎を拠点に武者修行し、今年の4月には正式に栗東に籍を移した。

 西塚騎手「(美浦で)うまくいきませんでした。栗東に来て関係者のみなさんに教えていただいて、失礼なことをしてしまったと、今になってようやく理解できつつあります。鹿戸先生、スタッフのみなさん、(鹿戸厩舎所属の三浦)皇成さんもかわいがってくださいました。短い時間でしたが、美浦での経験は大きなものでした。デビューさせてもらって感謝しています」

 父の仕事の関係で米国ラスベガスで生まれたが、すぐにニュージーランドに引っ越し、10歳まで過ごした。5年後にJRA競馬学校騎手課程に合格できたほど日本語を勉強してはいたが、鹿戸厩舎では文化の違いに苦しんだ。もっとコミュニケーションを取れば良かったと、今では申し訳なく思っている。

 西塚「ニュージーランドでは自己主張しないと生き残れませんでした。言い訳になってしまいますが、美浦では日本人の感覚で周りと接することができていませんでした。同じ失敗をしないように、今は常にいい方向に行けるように厩舎関係者のみなさんに指導していただいて、頼らせていただいています」

 父親が乗馬クラブを経営しており、そのつながりで藤原調教師とは(自身が)競馬学校に入る前から面識があった。藤原厩舎の馬が中山競馬を使う際は臨場業務を手伝い、ルーキーイヤーの北海道開催でも5鞍、依頼してくれた。

 西塚「初めて栗東に来た時、藤原先生は僕に足りないことをひと目で見抜かれました。当初は2か月ぐらいの滞在予定でしたが、指導していただいているうちに、もっともっと吸収したくなって(期間が)延びました。分かりやすく、納得しやすい教え方をしてくださいました」

 藤原調教師の教えで一番印象に残っていることは「継続」。例えばトレーニングでも、その日に満足せずに続けることで発見できることがあるという。正しい努力の仕方、方向性を持つことを意識している。

 西塚「木馬にも毎日乗って、ことあるごとに藤原先生にも見ていただきますが、少しずつ内容が深くなるといいますか。感覚的な部分が多いですが、継続の大切さを実感しています。調教でも、どこかで急にガラッと変わることがあります。最初は追えず、抑えるのも上手じゃなかったんですが、ある程度なら折り合いをつけられるように、少し自信を持てるようになりました」

 そして藤原厩舎に来て数週間がたった頃、今回のマーメイドSで手綱を執るホールネスの初出走の鞍上を任される。デビューから3戦は後ろからの競馬だったが、前走(熊野特別)は道中4、5番手で折り合って差し切り、競馬の形がガラッと変わって成長した姿を見せた。

 西塚「トモ(後肢)の力がしっかりして、だいぶ前進気勢が出てきました。ゲート内でも踏ん張りがきくようになって、スタートを出てくれました。仕上がりも良かったですし、十分に脚を使えると自信を持って乗りました。いい内容でした」

 5日の1週前追い切りは、芝コースで田口を背に6ハロン76秒0―12秒2。西塚は併せ馬の相手に騎乗した。ここ3戦は左回りで3連勝しているが、今回の舞台となる右回りでも、初出走の阪神で既走馬を相手に頭差の2着だった

 西塚「(5日は乗らなかったが)普段の調教に乗っていますしね。体が成長して、力強さが出ています。前走は重馬場でしたが、良馬場ならもっと切れると思います。初戦もすごくいいパフォーマンスでしたし、左右差は特に感じないので心配していません。注文がつかず、レースの形にもこだわりません」

 今回は3戦ぶりに(直線が)平坦のコース。もちろん前の馬に残られることは警戒しなければならない。ホールネスのセールスポイントをたずねると、歯切れのいい言葉が次々に飛び出してくる。

 西塚「(3走前は)新潟の内回りでも素晴らしい脚でした。成長途上で、(直線に)坂がない京都もプラスだと思います。大きい馬ですが、機敏に動けてパワーもあります。馬群にも動じませんし、割っていけます。とにかく素直で、肝が据わっていますね」

 1年目が10勝、昨年が15勝ときて、今年は22勝(9日現在)と大幅にペースアップ。5月26日には藤原厩舎のミナデオロで白百合Sを勝ち、初めてリステッド競走を制覇。ガッツポーズが飛び出した。

 西塚「(22勝に関しては)やっぱり継続が実を結んでいると思います。(馬上での)バランスを意識できるようになって、騎乗フォームもだいぶきれいになってきていると

思います。ミナデオロは力があるのは分かっていましたし、それを証明できて、込み上がるものがありました」

 休日もスマホで競馬を見てしまうという。そして今やトップジョッキーの一人になった坂井に「競馬」を教えてもらっているのも大きい。

 西塚「(坂井)瑠星さんをリスペクトしています。競馬も教えてもらって、食事に誘っていただくこともあります。うれしいですし、すごく感謝しています。早く追いつきたいですし、瑠星さんの感覚に近づきたい。いつか一緒に海外で乗りたいです」

 重賞騎乗は今回が2回目。前回はくしくも昨年のマーメイドS(ゴールドエクリプスで4着)だが、当時はテン乗りだった。今回はデビューから4戦すべての手綱を執り、意味合いが違う。

 西塚「デビュー前から調教で乗せていただいて、やっぱり思い入れが深いです。勝てるポジションにつけて、僕がうまく乗るだけです。僕自身まだこれからですが、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」

 絶好のチャンスのここで人馬ともに重賞初制覇を決め、お世話になっている関係者に少しでも恩返しをしたい。そして自身もひと皮むけた姿をアピールし、一気にブレイクする。(取材、構成・玉木 宏征)

 ◆西塚 洸二(にしづか・こうじ) 2004年3月9日、米国生まれ。20歳。22年3月5日に中山でデビュー。同4月2日、中山12R(フレーズメーカー)で初勝利。JRA通算47勝(9日現在)。160・2センチ、47・3キロ。血液型はA。インスタグラムのアカウントはkohji_nishizuka

◇アラカルト

 ▽同期 今村聖奈、佐々木大輔、角田大河ら。永島まなみの姉・みなみさんがバレットを務めていることもあり永島、今村、藤原厩舎の調教を手伝う田口らと食事に行くことが多い。

 ▽進上金の使い道 「自己投資ですね。馬具とか買ったりします」

 ▽自身の性格 「貪欲で欲深いです。もっと活躍したい」と分析する。

 ▽好きな音楽 日本、海外問わずラップやヒップホップをよく聴く。「失恋系が落ち着きます。基本さみしがり屋です(笑い)」

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