名古屋競馬に所属する宮下瞳騎手(44)=竹口勝利厩舎=が18日、日本の女性ジョッキーでは初となる通算1000勝を達成した。あと1として迎えたこの日、名古屋2Rのリアルスピードに騎乗して1着となり、デビューから1万1439戦目で大台に到達した。一度は引退しながらも、2人の男児の出産を経て現役に復帰。国内唯一のママ騎手が、スポーツ報知に独占手記を寄せた。
夢のまた夢だった1000勝を達成できて正直、なんて言ったらいいのか。26年前にデビューしたとき、5年前に復帰したとき、ここに到達するイメージは全くありませんでした。心から思うのは騎手として戻ってきて良かった。私にとって、そういう意味を持つ数字です。
感謝の気持ちを伝えたい人が数多くいます。まずは2人の息子(長男・優心くん、次男・健心くん)と夫(元名古屋競馬騎手の小山信行さん)です。6年前、私が現役のときの写真を3歳だった長男が見つけて「ママが馬に乗っている姿を見たい」とせがまれ、もう一度、騎手として頑張りたい思いが芽生えました。復帰の道を切り開いてくれたのは息子です。反対せず後押ししてくれた夫には本当に感謝しています。
次に両親です。父(健二さん)に復帰を決心したことを伝えると、鹿児島から名古屋に来て私が厩務員の仕事、騎手試験の勉強をしているときに子供の面倒をみてくれ、いろいろ助けてもらいました。いつも応援してくれた母(初美さん)は去年、年間100勝を見届けて間もなく天国に旅立ちました。鹿児島に帰ったときには、改めて母に報告したいです。
もちろん、ずっと支えていただいた師匠の竹口勝利調教師。現在もレースのときなど、子供たちの面倒を見てもらい、お世話になっている隣のおばあちゃん(長倉タエ子さん)。名前を挙げたらキリがなく、今の私があるのは多くの方々の助けがあったからです。
今の目標は、けがをせず一日でも長く騎手の姿を息子たちに見せること。2年前に落馬で鼻を骨折をしたときに顔がお化けのように腫れ、息子から「騎手になるのはやめた」と言われたのはショックでした(笑い)。もうあんなことがないように無事に乗り続け、ママの背中を見続けてほしいな。
後々は調教師になれたらと思っています。これからも馬に携わり、頑張っていくので皆さん、応援してくださいね。(名古屋競馬騎手)
◆宮下 瞳(みやした・ひとみ)1977年5月31日、鹿児島県生まれ。44歳。95年10月に名古屋でデビューし、11年8月に引退。05年に結婚した名古屋競馬の小山信行騎手(当時)との2人の男児の出産を経て16年8月に現役復帰。兄は元騎手の宮下康一さん。昨年、国内女性騎手として初の通算1万回騎乗、年間100勝を達成。地方重賞を5勝。NARグランプリ優秀女性騎手賞11回、特別賞3回受賞。21年に第2回競馬功績者表彰(農林水産大臣賞)、19年に令和元年度女性のチャレンジ賞(男女共同参画担当大臣賞)を受賞。152センチ、46キロ。血液型A。