武豊騎手(53)=栗東・フリー=が23年も早々に金字塔を打ち立てた。8日、第57回シンザン記念・G3(中京)で紅一点の2番人気ライトクオンタムを1着に導き、1987年のデビューから37年連続の重賞勝利。歴代ダントツの重賞勝利数も350の大台に乗せた。シンザン記念はジェンティルドンナ、アーモンドアイの3冠牝馬2頭を輩出した出世レース。ディープインパクト産駒最終世代の一頭で価値あるタイトルをつかみ、牝馬クラシック戦線に弾みをつけた。
馬場の中央まで持ち出された最後の直線。ライトクオンタムが父をほうふつさせる末脚で、ライバルをかわし去った。デビュー2戦目の初タイトル。前人未到のJRA重賞通算350勝を達成した武豊は開口一番、「初めて乗せてもらいましたが、いい馬ですね。能力があるなと思いました」と声を弾ませた。
序盤のビハインドにも、鞍上は冷静だった。「ゲートの中で落ち着きがなくて、飛び上がるような感じになって…」。逃げ切った初戦から一転して後方からの競馬。道中も外に逃げ気味の走りだったと明かしたが、終わってみれば「2戦目でこのパフォーマンス。楽しみですね」と振り返る快勝だった。
現役時代に全14戦の手綱を執ったディープインパクトの産駒。この勝利で国内に6頭しかいないラストクロップの現3歳を含め、全13世代での重賞制覇となった。ユタカは「(最終世代は)乗るのも難しいと思っていたので。重賞を勝てて、やっぱりうれしい」と自然と笑みが浮かんだ。
非凡な素質を見せつけた一方、課題も見えた。武幸調教師は「火曜(3日)に440キロあったけど、やっぱり減りますね。ハミ受けとかも直さないといけない。それを考えれば、勝てたのは良かった。時間が取れますからね」と賞金加算に安どし、今後を見据えた。
12年ジェンティルドンナと18年アーモンドアイ。過去に2頭がこのレースで牡馬を撃破し、3冠牝馬に上り詰めた。自身の37年連続重賞勝利について「SDGsな感じ」と、国連が掲げる「持続可能な開発目標」の標語を持ち出して笑ったレジェンドは、「この調子でいっぱい勝ちたいですね」と続け、直後の12Rも宣言通り先頭でゴールを駆け抜けた。通算4400勝にも残り5勝。23年も名手は第一線で結果を出し続ける。(吉村 達)
◆ライトクオンタム 父ディープインパクト、母イルミナント(父クオリティーロード)。栗東・武幸四郎厩舎所属の牝3歳。北海道千歳市・社台ファームの生産。通算2戦2勝。総獲得賞金は4730万8000円。重賞初勝利。馬主は(有)社台レースホース。