◆第44回ジャパンカップ・G1(11月24日、東京・芝2400メートル、良)
第44回ジャパンC・G1は24日、東京競馬場で行われ、武豊が騎乗した1番人気のドウデュースが天皇賞・秋から連勝でG1・5勝目を挙げた。海外の強豪を強烈な末脚で蹴散らし“世界一”に輝いた。既に年内での引退を表明しており、出走は状態次第だが、有馬記念(12月22日、中山)でのラストランで20年ぶり3頭目の秋古馬3冠に挑む。
歓喜のウィニングラン。「ユタカ!」、「ドウデュース!」。7万人を超える観衆から声援が響いた。ジャパンCが「ロンジンワールドベストレース」、つまり“世界一”のレースに選ばれてから1年。国内外の強豪を同じ舞台で一蹴し、単独最多5度目の制覇となった武豊は「今年は世界を代表する馬が来てくれた。勝てたことに価値がある」とG1・5勝目に胸を張った。
脅威のスピードを見せた前走の天皇賞・秋とはまた違う、ねじ伏せるような強さ。前半の1000メートルが62秒2。スローな流れだが、いつもと変わらず後方から2番手で折り合いに専念。3角過ぎから「押さえていた手綱を、少し緩めるくらいでした」と絶妙な折り合いをキープしたまま前との差を詰めると、4角の直線入り口で一気に動いた。
残り200メートルの地点でのみ込むように先頭へ。余力を残していた2頭が差し返し「動くのが早かったと思いましたが、この馬なら最後まで持つんじゃないかと。自信を持っていきました」。信頼に応え、最後の1完歩は首をぐいっと出してゴール。直後に少しだけ左拳を握った鞍上は「着差はなかったけど、かなり中身が濃い。強さが出たレース」と絶賛。人馬の絆でつかんだ勝利だった。
笑顔で迎えた友道調教師は「向こう正面は心配して見ていた。ゴール前まで勝ちは意識できませんでした。ほっとしました」と気持ちを吐露した。海外遠征で結果を出せず、ホームで迎え撃った一戦だけに「本当のドウデュースを、今日見せられた」と目を輝かせた。
今年いっぱいでの引退を表明して臨んだ秋2戦で連勝。状態に問題がなければ、次走はもちろん、04年のゼンノロブロイ以来、史上3頭目の「秋古馬3冠」がかかる有馬記念となる。指揮官が「あと一戦、何とか頑張りたい」と言えば、主戦も「ここまで来たら、勝ちたい気持ちが強い」と前を向いた。口取り写真撮影時。曇り空のなか、一瞬だけ夕日がドウデュースを照らした。有終の美へ向け、道は示された。(山下 優)
《武豊騎手が一番のファン》
ドウデュースについて話すときの武豊騎手は、まるで少年だ。“僕たちが一番強いんだ”と言わんばかりに、目を輝かせる。昨年の有馬記念を勝った翌週。祝福の声をかけると「でも俺、毎回、『ドウデュースはすごいで』って言ってたやろ」と誇らしげだったことが、今も忘れられない。
その相棒について、「不思議な馬」と話したこともある。「2歳チャンピオンなって、ダービーも勝ってるのに、結構苦境に立たされることがある。でもそれを全部、この馬は乗り越えてくれる」。22年凱旋門賞の惨敗、23年ドバイ・ターフの出走取消…。一つの敗戦から立ち直れない馬も、何度も見てきた。だからこそ、不思議なほどの強さを肌で感じている。
「毎日騎手生活やってるなかで、一番励みになるのは馬だし、ドウデュースだし」。幾多の名馬の背中を知るレジェンドに、ここまで言わせるのがドウデュース。ドウデュースの一番のファンは、武豊騎手なのだ。(水納 愛美)
◆ドウデュース 父ハーツクライ、母ダストアンドダイヤモンズ(父ヴィンディケーション)。栗東・友道康夫厩舎所属の牡5歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算成績16戦8勝(うち海外3戦0勝)。総獲得賞金は17億7587万5800円(うち海外2239万6800円)。主な勝ち鞍は朝日杯FS・G1(21年)、日本ダービー・G1(22年)、京都記念・G2、有馬記念・G1(ともに23年)、天皇賞・秋・G1(24年)。馬主は(株)キーファーズ。