「芦毛の怪物」ゴールドシップの真の姿は「優等生」 種牡馬として今年種付け頭数は最多120頭超

ビッグレッドファームで種牡馬として暮らすゴールドシップ(カメラ・浅子 祐貴)
ビッグレッドファームで種牡馬として暮らすゴールドシップ(カメラ・浅子 祐貴)

 「夏の自由研究」功労馬編は、G16勝を挙げ、今でも高い人気のゴールドシップを取り上げる。現役時代はレースでの圧倒的強さと「怪獣」とも評された気性の激しさを見せた個性派の、真の姿とは…。15年の有馬記念を最後に引退し、種牡馬として活躍している「芦毛の怪物」の今を、浅子祐貴記者がけい養されている北海道新冠町のビッグレッドファームで取材した。

 圧倒的な強さを見せることもあれば、大きくゲートで立ち遅れるなど、強烈なインパクトを残したゴールドシップ。15年の有馬記念を最後に現役引退し、種牡馬として活躍する今でも個性派として絶大な人気を誇っている。

 けい養されているビッグレッドファームは、海外のような景観が広がる。池の向こうにたたずむ立派な厩舎、整備された芝生、ゆっくりと流れる白雲―そんな環境の中で栄養たっぷりの青草を食べながら過ごす姿は、現役時代の破天荒なイメージが全く想像できないほどにおだやかだ。使用する馬房の扉には「GOLD SHIP」と「STAY GOLD」のプレートが並ぶ。父が使っていた馬房が、牧場に来た当初からの居場所になっている。

父ステイゴールドと同じ馬房でプレートもその上に
父ステイゴールドと同じ馬房でプレートもその上に

 導入には、父ステイゴールドの影響も大きかった。父はすでにトップサイアーとして地位を確立しており、先代の岡田繁幸氏が優良種牡馬の後継を「なんとか日高に置きたい」との思いで、小林英一オーナーにオファー。同ファームの馬づくりや、種牡馬の管理方法といった熱い思いの全てをぶつけたところから、ゴールドシップ“第二の馬生”はスタートする。

 気性が激しく、荒々しかった父をよく知るスタッフは、その息子を身構えて迎えたが、「ステイと違って目がギラギラしていないから、そこまでではないかも」と木村浩史スタリオン主任は、当時の第一印象を振り返る。

 数々の種牡馬を扱ってきた同主任は、現役時代とのギャップが生まれた背景をこのように分析する。「レースや調教に対するストレスで年を取った馬がズブくなるというけど、シップの場合は表現の仕方やベクトルが大きかった。しかもトップホースという存在で目立ってしまったってことだと思う」。今では拒否反応や逃避行動を見せることはなく、種牡馬としても扱いやすいという。このように牧場で見せる姿がゴールドシップの本質なのかもしれない。

 今年は24日時点で120を超える種付け頭数となり、シーズン最多を更新。それでもへこたれる様子はなく、いつも通りのリズムで業務をこなす。「種牡馬としてはスイッチの点火が早く、スタミナや体力もある」と木村主任は頼もしそうに見つめる。これは生まれ持った部分が大きく、天性のポテンシャルが確実に産駒に受け継がれている。

 「日高をもっと良くしたい」という岡田繁幸氏の情熱で導入が決定したゴールドシップ。父を超えるようなインパクトを残す産駒の登場を、馬産地は願っている。(浅子 祐貴)

 ◆ゴールドシップ 父ステイゴールド、母ポイントフラッグ(父メジロマックイーン)。2009年3月6日、北海道日高町・出口牧場生まれの牡15歳。11年にデビューし、12年は皐月賞、菊花賞、有馬記念を制覇。同年の最優秀3歳牡馬に選出された。古馬になってからは宝塚記念を連覇するなど、G16勝。通算28戦13勝(うち海外1戦0勝)。総獲得賞金13億9776万7000円。15年に現役を引退し、16年からビッグレッドファームで種牡馬入り。主な産駒は21年のオークスを制したユーバーレーベンなど。

海外のような景観のビッグレッドファーム
海外のような景観のビッグレッドファーム
池や芝生も広がる環境
池や芝生も広がる環境

 ◆ビッグレッドファーム ゴールドシップが過ごすビッグレッドファーム明和は、1999年に北海道新冠町に開場。ビッグレッドファームは明和を含めて北海道に6か所、茨城県に1か所の牧場を構え、種付けから生産、育成、調教を行う総合牧場。7頭の種牡馬を管理するエリアと、功労馬のコスモバルクは13時半~15時半まで見学が可能。(※ビッグレッドファーム、ふるさと案内所のホームページに見学ルールを記載。双方への直接のお問い合わせは、ご遠慮ください)

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