【ザ・馬術 藤原 英昭調教師が選ぶ注目選手】杉谷泰造(障害)&大岩義明(総合)技量あるメダル狙え!JRA所属では戸本一真(総合)、佐渡一毅(馬場)、北原広之(馬場)に期待

ルペールノエル(牡10歳、障害オープン)に岩田望が騎乗。これは横木を3本またいで駆けるトレーニングだ。藤原英調教師は「バランス、騎座(シート)の確立、強化(が目的)で、世界共通のトレーニング。平坦なところで普通にやるよりも、横木で練習した方が馬の動きが大きくなり、よりバランスシートの強化になる。さらに手を離すことにより、その難易度は高く、さらなる強化につながっていく」と狙いを説明した。
ルペールノエル(牡10歳、障害オープン)に岩田望が騎乗。これは横木を3本またいで駆けるトレーニングだ。藤原英調教師は「バランス、騎座(シート)の確立、強化(が目的)で、世界共通のトレーニング。平坦なところで普通にやるよりも、横木で練習した方が馬の動きが大きくなり、よりバランスシートの強化になる。さらに手を離すことにより、その難易度は高く、さらなる強化につながっていく」と狙いを説明した。
 障害を飛び越えるルペールノエル。藤原英調教師は「障害を飛び越えるのは、競馬だから馬術だからではなく、馬に正しく乗って技術を上げるための訓練。常にベースは一緒」と解説。
 障害を飛び越えるルペールノエル。藤原英調教師は「障害を飛び越えるのは、競馬だから馬術だからではなく、馬に正しく乗って技術を上げるための訓練。常にベースは一緒」と解説。

 2018年に年間最多勝、エイシンフラッシュでの10年日本ダービー制覇などの実績を残してきた藤原英調教師(54)は馬術で馬に乗る基礎を学び、日本の競馬をリードしてきた。現在も馬術のトレーニングを取り入れた調教をもとに一線級で活躍。そんなトレーナーが馬術で注目している選手は? 来年に延期となったが、日本の馬術にとって東京五輪開催の意義などを聞いてみた。【取材、構成・内尾 篤嗣】

 ―藤原英調教師は馬術のトレーニングを調教に取り入れ、JRAの一線級で活躍してきました。馬術のキャリアは?

 「京都競馬場で生まれ、もともと馬に接する環境がありました。栗東トレセンは私が保育園のときに完成し、できたと同時に淀から移ってきました。小学生のときから乗馬苑などで乗ってきて、杉谷乗馬クラブにいたのは高校から大学まで。馬に乗ることを勉強し、徹底的に鍛えようと思って日本一の乗馬クラブ、日本一の馬術家がいるところで修業しました。そこにはヨーロッパの選手、コーチなどが集結する時代でした」

 ―杉谷乗馬クラブでは杉谷昌保さん(選手として1968年メキシコシティー、72年ミュンヘン、76年モントリオール五輪に出場)を師匠とし、馬術を学びました。そこで学んだことについて教えてください。

 「小さいときから馬に乗ってきて重要なのは、まずは正しく馬に乗ること。その技術を身につけないと前に進めません。正しいといっても、何が正しいのかを説明するのは本当に難しいこと。でも、馬術のトップクラスの選手は正しいことをやっているから日本、世界のトップの地位まで来ているのです。それを見習ったり、教えてもらったりしたのは、馬に乗る者として大きな財産です」

 ―馬術で五輪を目指すことを考えましたか?

 「中学で騎手の試験に落ちて、騎手を諦め、次は調教師になって競馬を盛り上げることに目標が変わりました。そのためには徹底的に馬乗りの技術を上げていかないと。世界の、日本のトップが集結する乗馬クラブにいたら経済力、技術力など身の丈は分かります。そこでオリンピックを目指すより、競馬の世界でチャンピオンを目指す方が自分には向いていると思いました」

 ―馬術、競馬の技術で共通する点は?

 「競馬と馬術は分けて考えられがちですが、騎手でも、馬術の選手でも馬に乗ることの基本は一緒で、それは世界共通。スケートだってフィギュアがあったり、スピードスケートがあったり。スキーだって滑走だったり、ジャンプがあったり。でも、スケート、スキーで滑ることはみんな一緒。まずは、どちらもしっかり滑ること。馬も一緒で、一朝一夕で乗れるわけではなく、一番大事なのは正しく乗る基本動作を継続できるかできないか。長く継続できる人間が上に行けるのは証明されています」

 ―そんな藤原英調教師が、馬術で注目している選手を教えてください。

 「まずは杉谷泰造(障害)と、大岩義明(総合)。オリンピックは来年に延期となりましたが、日本のトップとしてメダルを取れる可能性があるので、チャレンジしてほしいです。そしてJRAから戸本一真(総合)、佐渡一毅(馬場)、北原広之(馬場)。この3人はJRAの所属としてオリンピックに出て活躍してほしいです」

 ―その杉谷泰造選手が昨年12月3日から8日までタイ・パタヤで行われた第1回FEIアジア選手権の個人戦で5ラウンド全てがミスなく減点ゼロで1位となり、金メダルを獲得しました。

 「アートコーポレーションがスポンサーとして泰造君をサポートしてきて、第1回のアジアチャンピオンになれたというのは本当にすごいこと。でも、残念なことに、それほどメディアなどは注目しておらず、反響が小さかったようです。それが日本で馬術がもうひとつ発展しないのに集約されていると思います。競馬はギャンブル性があって注目度が高く、海外で勝ったりしたら大きなニュースになります。でも、馬術の場合はマイナーで、日本に根付いていないのを、はがゆく思います」

 ―日本で馬術が浸透しないことについて、どのような思いを持っていますか?

 「ヨーロッパでは馬術の試合のテレビ放送は当たり前ですが、日本で放送を見ることは難しく、仮にやったとしても視聴率は取れないでしょう。それは馬に乗る環境が少なく、馬術を体験した経験のある方が、あまりいないから。野球、サッカーと違い、馬術は限られた施設、人間でないとできません。日本はなかなか馬術が根づかない文化、環境にあるけど、本当に面白いスポーツなので、何とか皆さんに知ってもらいたいです」

 ―新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、来年に延期となりましたが、日本の馬術にとって東京五輪開催の意義をどう考えますか。

 「今は世界が大変な状況ですが、一日も早く終息して来年、無事に東京五輪が開催されることを願っています。馬術は世界に行ったらメジャーなスポーツ。五輪は日本で馬術を広めるには絶好の機会で、そのためにもメダルが使命だと私は思います。選手にそれだけの人材がそろい、それだけの技量はあるはずだからチャンスでしょう。皆さんが馬術の面白さを知って、認識されていけば競馬、馬術サークル、お互いにとって素晴らしいこと。五輪をきっかけに、もっと日本で馬の文化が広く根づいてくれたら、何よりもうれしいです」

 ◆藤原 英昭(ふじわら・ひであき)1965年6月29日、京都府生まれ。54歳。同志社大学卒。父の藤原玄房(はるのぶ=故人)さんは馬車レース(繋駕速歩競走)の元騎手で、中央競馬入り後は厩務員として83年ダービー2着のメジロモンスニーを手がけた。89年9月に栗東・星川薫厩舎の調教助手となり、00年2月に調教師免許を取得。01年3月開業。今年10勝、JRA通算726勝、重賞53勝。G1は19年・高松宮記念(ミスターメロディ)など10勝。地方交流G1を3勝。

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