今年デビューした新人騎手は東西で8人。うち3人がすでに10勝以上をマークと、順調な滑り出しを見せているように映る。角田大和騎手=栗東・角田晃一厩舎=は、7月4日終了時点で11勝。小沢大仁騎手=栗東・松永昌博厩舎=、永野猛蔵騎手=美浦・伊藤圭三厩舎=の13勝に続いている。
師匠でもある父は騎手時代、ここ一番で勝負強さを発揮し、ジャングルポケットでの日本ダービーなどG1で10勝。角田はその長男として注目を浴びてデビューした。3月6日の初騎乗からの4か月を「あっという間でした。実際に競馬に乗らないと分からないことばかりで『ここまで通用しないのか』と。想定外のことが起きた時にうまく対処できないことが多く、勝っても反省ばかりです」と振り返る。
課題も浮き彫りになった。「1着より2~4着が多いのは、それだけチャンスのある馬で結果が出せていないということ。レースで余裕がないのは、体力不足が判断力の低さに影響しているんだと感じます」。仲のいい泉谷楓真騎手や小沢騎手が夏の北海道シリーズに向かって以降は「平日が暇になりました」と笑うが、これまで以上に走り込みや木馬でのトレーニングに時間を割き、下半身強化に励んでいる。
夏は一鞍でも多くの騎乗機会を得るため、地元に残る決断をした。「北海道よりも3キロ減で乗れる騎手(デビュー5年未満、30勝以下)が少なく、貴重になってくると思うんです。トップジョッキーもたくさんいて、近くで見て勉強もできますからね」と明確に理由を語る。小倉開幕週のCBC賞・G3ではプリカジュールで重賞デビュー(13着)も果たした。今後も斤量面で恩恵のない特別レースの依頼は増えていくだろう。
憧れの騎手はライアン・ムーア(英国)。「あの力強いフォームには引き込まれます」と目を輝かせる。欧州競馬は毎週欠かさずチェック。「いつかではなく、できるだけ早くイギリスには行きたいです。もちろん日本でもっとしっかり乗れるようになってからですが」と、海外での武者修業も視野に入れる。
1年目の目標は、父が1989年に43勝を挙げて獲得したJRA賞・最多新人勝利騎手のタイトル。「この夏に何もアピールできなければ『消えて行く』くらいの覚悟でやっていきます。秋までにグンと技術をつけて、自分の名前の価値を高めたいです」と飛躍を違う。
秋競馬が開幕する頃、勝ち星はどこまで伸びているのか。熱いプレーを長い目で見守っていきたい。(中央競馬担当・吉村 達)
◆角田 大和(つのだ・やまと)2001年9月3日、滋賀県生まれ。19歳。小学5年で本格的に乗馬を始め、栗東・角田晃一厩舎所属で今年3月6日にデビューし、同27日に初勝利。JRA通算240戦11勝(7月4日現在)。167センチ、47キロ。血液型B。