【ヴィクトリアM】クリノプレミアム逃げて良し、差して良し!波乱演出だ

久々の大舞台に燃える伊藤伸調教師とクリノプレミアム
久々の大舞台に燃える伊藤伸調教師とクリノプレミアム

◆第17回ヴィクトリアM(5月15日、東京・芝1600メートル)

 波乱が続く今年のG1シリーズ。1番人気馬が7連敗を喫する“穴馬躍進ロード”は、ヴィクトリアマイル(15日、東京)でも続くのか。不気味な存在がクリノプレミアム(牝5歳)。管理する伊藤伸一調教師(62)=美浦=がまさに「今週のキーマン」。恩田諭記者が直撃した。

 ―2走前の中山牝馬Sは15番人気ながら重賞初V。続く前走の福島牝馬Sも首差2着の好走でした。

 「前走は(後ろから行った中山牝馬Sと違って)最初から位置を取っていこうと。(2着は)悔しいけど、(松岡は)最高に上手に乗ったと思う。2回続けていいレースができたのは良かった」

 ―クリノプレミアムとの初対面は?

 「2018年8月のサマーセール。比較展示で放馬して、走り回って。みんな『あの馬だけは買うのをやめよう』と言っていた。主取(セール不成立)になったけど(栗本博晴)オーナーは気になって仕方がなかったみたい。その後、購入されました」

 ―19年10月にデビュー(5着)し、21戦。馬も5歳と大人の年齢になりましたが…。

 「おてんば娘ですよ。馬房の壁を蹴るのはもちろん、よじのぼっていく。下に敷いているゴムマットは人間でも持ち上げるのが大変な重さなのに、それをかんで振り回すこともある」

 ―気性の激しい馬ですが、良い結果が出るようになったきっかけは?

 「どこでどう変わったとかじゃなく、もともと能力はあった。新潟で3勝クラスを勝った時に三浦騎手が『僕たちが思っているより走りますよ』って言ってくれたのを覚えている。自分の能力を出し切らない競馬も続いたけど、勝った時はかみ合えばこれぐらい走れるんだなと。でも、G1に挑める馬になるとは思っていなかったね」

 ―この馬のストロングポイントは?

 「逃げても、後ろから行っても勝っているし、どんな競馬でもできる。折り合いさえうまくいけば…」

 ―厩舎にとっては12年の天皇賞・春(フェイトフルウォー=13着)以来の平地G1挑戦となります。

 「G2を飛び越しているけど、賞金でもG1に出走できる位置まできた。もちろんどれぐらいやれるのか、期待する部分はあるよ」

 ◆伊藤 伸一(いとう・しんいち)1959年7月17日、千葉県出身。62歳。日体大から82年に競馬学校厩務員課程入学。同年7月から見上恒芳厩舎の厩務員。その後矢倉玉男厩舎、伊藤竹男厩舎の助手をへて98年に調教師免許を取得。初出走は98年11月21日の東京7Rボヘミアンカバリエ(3着)、初勝利は99年1月9日の京都7Rの同馬。JRA通算5253戦239勝(重賞3勝)。

【取材後記】伊藤伸師はJRA競馬学校の厩務員課程1期生。日体大の相撲部出身で、当初は教員を目指していたが、調教師だった父・竹男さんの仕事を手伝うと決めたタイミングで競馬学校が開校し、1982年に入学した。

 そこで初めて馬にまたがったにもかかわらず「左右飛び乗り10回と言われたら、僕が一番速かったね」と振り返る。父は50~60年台に、ダイゴホマレ、アイテイオー、ガーネットなどで日本ダービー、オークスなど八大競走を8勝した名ジョッキー。運動神経のよさは父譲りなのだろう。

 その息子はすでに還暦を過ぎたが、トレセン内を自転車で走り回っている姿は若々しい。父から受け継いだ厩舎で今回はG1初制覇のチャンス。クリノプレミアムはここ2走のレースぶりがいいだけに、期するものがあるはずだ。(恩田 諭)

最新記事

さらに表示
ニュース検索
馬トク SNSアカウント
  • X (旧Twitter)
  • facebookページ
  • Instagram
  • LINE公式アカウント
  • Youtubeチャンネル