3月に東西で新人ジョッキー6人がデビューした。田口貫太騎手=栗東・大橋勇樹厩舎=は、3月8日の笠松競馬で行われた中央交流競走で同期一番乗りとなるV。翌9日も同競馬場で勝利と上々のスタートを切った。
現在は笠松で調教師として活躍する父・輝彦さん、母・広美さん(旧姓・中島)は、ともに笠松所属の元騎手。“ホーム”での初勝利は格別だった。「両親が乗っていて、自分自身も一番見ていた競馬場。そこで初めて勝つことができて、みんなに『おめでとう』と言ってもらってうれしかったです」と笑みを浮かべ「力のある馬を用意してくれた大橋先生には感謝しかありません」と頭を下げた。
レース中は無我夢中だったようで「(初勝利は)どれだけの手応えが残っていれば勝てるのかが分からず、ゴールまでとにかく必死でした。(2勝目は)逃げた時に道中のペースが乱れてしまって、改めて覚えないといけないことが多いと感じました」と振り返った。
野球に打ち込んでいた中学時代に転機が訪れた。2017年の日本ダービーを現地で観戦し、騎手の魅力に取り付かれた。競馬学校の1回目の受験は不合格。その後は牧場に住み込みで働きながら馬乗りの基礎技術を体にたたき込み、2回目の受験で狭き門を突破した。
ジョッキーを目指したいと両親に伝えた時は、賛成も反対もされなかったという。「騎手に関していろんな話をしてもらいましたが、一番大事なのは『馬が好きでないと成り立たない』ということ。やる気があるなら応援するぞと言ってもらいました」
いつも笑顔で元気な愛されキャラ。トレセンで会う人、会う人に「おめでとう」「よかったな」など声をかけられる様子を見ていると、関係者にかわいがられていることが分かる。デビュー2週間でJRA20鞍の騎乗は同期で最多。大橋調教師は「負け続けて悩み込んでしまうことを思えば、結果が出て良かったと思う。でも今は走る馬に乗るより、数を乗っていくことやね」と強調。今後も弟子の経験値アップへ、サポートを惜しまない。
次の目標はJRA1勝。「納得してもらえる騎乗をしていかないといけません。(勝てなくても)少しでも見せ場はつくれるように」。今のふんわりした優しい顔つきが、勝負の世界でどう変わっていくのか。楽しみに見守っていきたい。(中央競馬担当・吉村 達)