JRAは12日、06年のオークスと秋華賞を制したカワカミプリンセスが起立不能となり、11日に死んだことを発表した。20歳だった。引退後は生まれ故郷でもある北海道新ひだか町の三石川上牧場で繁殖牝馬としてけい養され、繁殖引退後も同牧場で余生を過ごしていた。
現役時代に管理していた西浦勝一元調教師は「名馬中の名馬、という馬でした」と振り返る。06年2月のデビューから本田優騎手(現調教師)とのコンビで君子蘭賞、スイートピーS、オークスと4連勝。デビューから85日目のオークス制覇は1982年のシャダイアイバー(78日)に続く、史上2位の早さだった。
秋も直行だった秋華賞を完勝。牝馬2冠馬に輝いた。「秋華賞まではポンポンと勝ち、鍛えるたびに強くなって、馬もそれに応えるようにどこからでも1着でゴールしてくれました」と西浦元調教師は懐かしそうに語る。
続くエリザベス女王杯も初の古馬相手に1位でゴール板を駆け抜けたが、斜行による12着降着となった。日本のG1で1位入線馬の降着は1991年の天皇賞・秋のメジロマックイーン以来、史上2頭目。衝撃的な初の敗戦だった。この年はJRA最優秀3歳牝馬と最優秀父内国産馬を受賞した。
古馬になってからは骨折などもあり、なかなか勝ち切れずに未勝利。6歳時の09年エリザベス女王杯(9着)を最後に引退した。通算17戦5勝。総獲得賞金は3億5089万2000円。
これまで、子供は9頭がデビューして、JRAで勝ち上がったのは1頭しかいない。「子供は思うように走れていないですけど、孫やひ孫の代からでも血を受け継いだ馬が走ってほしいと思っています」と期待を込めた西浦元調教師。記憶にも記録にも残る名牝がまた一頭、天国へと旅立った。