サイバーエージェント社長・藤田晋氏「1頭すごいのが出れば面白いんだ」2週連続G1で有力馬スタンバイ

愛馬の写真とともにクラシック初参戦を語る藤田氏
愛馬の写真とともにクラシック初参戦を語る藤田氏

 今週始まる競馬のクラシックレース。馬主4年目で初めて愛馬を送り込むのが、スマホゲーム「ウマ娘」で知られるサイバーエージェント社長の藤田晋氏(50)だ。桜花賞はボンドガールが抽選待ちで、皐月賞(14日)はシンエンペラーがスタンバイ。さらに海を越えたケンタッキーダービー・米G1へのフォーエバーヤング参戦も決定的。7日の開幕戦、桜花賞を前に、喜びと意気込みを語った。

(取材・構成=松末 守司)

 ドバイの熱風を日本にも呼び込む―。UAEダービーをフォーエバーヤングで制したばかりの藤田氏は、この春、初めてクラシックに愛馬を送り込む。3月30日にドバイでレースを観戦し、翌31日に日本にとんぼ返りし、1日には自身の会社の入社式に出席。多忙を極めるが、愛馬のことになると疲れも見せず話は止まらない。

 フォーエバーヤングのUAEダービーは、1角で外を回りながらも好位に取りつくと、直線で粘るアウトバーンをねじ伏せ、サウジに続く、2か国でのダービー制覇の快挙を達成。レース中は、「どちらかというと心配ばっかりして見ていました。キックバックを嫌がるので、馬の後ろに入ったときに大丈夫かなとか、2着馬が意外に粘っているとか…。ただ、勝ってきたメンバーの中であの差で勝ってたのは、本当に強いんだと思いましたね」

 実は、その強さはサウジダービーまで半信半疑だったという。「ドバイに行く気はなかったんです。1番人気だなぁと思っても肩を落として帰ってくる経験も多いので、それがサウジ、ドバイだときついなと思っていたんですが、サウジダービーを勝ってやっぱり行こうとなりました。行って良かったです。次はケンタッキーダービーですが、勝ち方もいろんな競馬場、パターンで勝っている。瑠星くん(坂井騎手)も完全に慣れてくれたので、継続騎乗になるのもいいですね」と米クラシック制覇を視界に入れる。

 競走馬を所有して3世代目で自身初のクラシックを迎える。「(早いと)みんなそうおっしゃってくれますが、使ってる額が額ですからね。去年は1頭も出られなかったのですが、自分がセリで競り負けた馬が何頭か出ていて、あと一歩だなという思いはありました。このくらい(3年)のイメージをしながらやっていましたよ。初年度のセレクトセールは、慌ただしかったですが、買う段階で準備ができていたという意味では、初めての世代ですからね」

 桜花賞のボンドガールは、昨年、予定した阪神JF前に放馬するアクシデントがあって、桜花賞出走はほぼ絶望的だったが、3分の2の抽選とはいえ、出走の可能性が出てきた。まだキャリア2戦だが、「新馬戦が強烈でした。スローペースで逃げ粘ると思っていたところで差してくれました。手塚先生(調教師)から出走できそうと連絡があったのは2週間前くらい。ニュージーランドTからNHKマイルCに、と思っていたので出られればと思います」

 皐月賞のシンエンペラーは、「日本ダービーに勝ちましょう」と矢作調教師と話し、フランスのセリで210万ユーロ(約2億9000万円)で落札した。「矢作先生も新馬戦の時は7、8割で出すのでと言っていたんですけど、勝ってくれました。そういう意味で成長を期待したいなという感じですね。2走前のホープフルS(2着)がちょっと出てから遊んでしまって差されてしまいました。ただ、報知杯弥生賞もそうですが、今後、伸びしろのありそうな負け方ではありますよね」と手応えを伝える。

 ホープフルS後、自身のSNSで「皇帝即位は延期です」とつぶやき話題になった。「ツイートしているときはすごいへこんでいましたけどね。その悔しさはもっと大きい舞台で返したいですね。矢作先生がリップサービスで『英国ダービーを』とおっしゃっていましたけど、日本のクラシックを目指してやってきたのでね。それが終わってから海外参戦は考えようかなと思います。初めて可能性がある馬が出てきましたから」とまずは皐月賞で「皇帝即位」をもくろむ。

 馬主生活は「思った以上に勝てないですね。みんなが思っているほど、自分は勝っているとは思えていないです」と話すとはいえ、同世代に3頭の活躍馬が出てきたことに新たな楽しみも見いだしている。「1頭すごいのが出れば面白いんだということが分かりました。(3頭もいるので)幸せなことですね」

 日本のクラシックに向けては「どっちか勝ってくれればいいなと思ってますけどね。そう思いきや、勝てないのも競馬だと思っています。ただ、ドバイから3週間、楽しみが続いていくのはもう最高ですよ。週末は忙しいですよ。(土曜日の)ニュージーランドTだとサッカー(自身が代表取締役社長兼CEOを務めるサッカーJ1のFC町田ゼルビア)の試合とかぶりませんが、(日曜日の)桜花賞ならサッカーとかぶります。申し訳ないけど今回は馬重視で。大阪に行く準備をしますよ」。楽しみは当分終わりそうにない。

 ▽ボンドガール(美浦・手塚厩舎、父ダイワメジャー)2戦1勝。ダノンベルーガ(ドバイ・ターフ23年2着、24年3着)の半妹。昨年6月に素質馬がそろった新馬戦でデビュー勝ちし、サウジアラビアRC・G3は2着。阪神JF・G1は外傷で回避し、桜花賞は現時点で3頭中2頭の抽選を通れば出走可能。

 ▽シンエンペラー(栗東・矢作厩舎、父シユーニ)4戦2勝。20年に凱旋門賞・仏G1を制したソットサスの全弟。昨年11月にデビュー勝ちし、ホープフルS・G12着。報知杯弥生賞・G22着を経て皐月賞に臨む。

 ▽フォーエバーヤング(栗東・矢作厩舎、父リアルスティール)5戦5勝。22年セレクトセールで9800万円で落札。昨年10月のデビューから5連勝中。2月にサウジ、3月にUAEで2か国のダービーを制覇し、5月4日に行われる米国競馬最大の祭典、ケンタッキーダービー制覇を目指す。

 ◆藤田オーナーの所有馬 21年に千葉サラブレッドセール史上最高となる4億7010万円(税抜き)で落札したドーブネは、今年の中山記念・G22着など16戦6勝。22年ニュージーランドT・G2を制し、初の重賞勝ちをもたらしたジャングロは米国のトレーニングセールで26万5000ドル(約2900万円)で落札した。日本最大の競走馬セリであるセレクトセールでは21年・23億6700万円(18頭)、22年・22億2600万円(18頭)、23年・23億6900万円(16頭)と3年連続で高額落札を行い、JRA登録馬はこれまで69頭。

 ◆クラシックレース 3歳馬のみが出走できる桜花賞、皐月賞、オークス、日本ダービー、菊花賞の5レースの総称。英国にならい創設され、1932年に第1回日本ダービーが行われた。生涯一度しかチャンスがなく、出走や勝利は最大の名誉とされる。米国ではダートで行われるケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントSが「クラシック3冠」。

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