◆第58回スプリンターズS・G1(9月29日、中山競馬場・芝1200メートル)
秋のG1開幕戦、第58回スプリンターズS(29日、中山)の出走馬が26日、確定した。パワーアップした「考察」はレースの行方を左右するファクターに迫る「キーポイント編」。坂本達洋記者は、高速決着が続く中山の馬場について深掘り。3連覇が懸かる池江泰寿調教師(55)=栗東=が「みんな忘れているけど」と、自信を見せるママコチャに注目した。枠順はきょう27日に決まる。
電撃6ハロン戦と言われるスプリンターズSで、今年のキーポイントは「極端な高速馬場」にある。今開催の中山では開幕週に紫苑S(芝2000メートル)を勝ったクリスマスパレードが1分56秒6のコースレコードをマーク。Cコース(6メートル外に内柵を設置)替わりだった先週は2歳オープンのカンナS(芝1200メートル)でエコロジークが2歳JRAレコードを叩き出した。例年と比べても速いタイムが出ており、先行馬が有利な印象だ。
そこで先週末に中山競馬場の馬場造園課・野津智課長を直撃し、例年との違いを探った。春の3回中山開催(4月14日まで)後、夏の期間を利用した芝の張り替えなどの整備は従来通りだったが、記録的な猛暑の影響は大きかったという。同課長は「平年と比べて相当に暑い夏だったので、野芝の生育にとっていい条件でした。根付きがいいので、1週目が終わった段階でダメージが本当に少なく、今も去年と比較したら内側の傷みは少ないです」と説明。クッションが利いて走りやすく、よりいい状態をキープできていることが大きな理由のようだ。
関東の有力ジョッキーに取材をしても、今年の芝コースは特徴的なようだ。戸崎騎手が「時計が速くて前が有利? 例年と比べて傾向は強い感じがあります」と言えば、横山武騎手は「高速決着になるのは、ほぼ間違いないんじゃないかなと思います」と指摘している。
出走馬の芝1200メートルの持ち時計を比較すると、ヴェントヴォーチェ(1分6秒8)を筆頭に、2位のマッドクール(1分6秒9)から0秒1刻みで多くの馬が居並ぶ。昨年の覇者ママコチャは1分7秒4にとどまるが、実は昨年5月28日の安土城Sでは芝1400メートルのJRAレコードタイ(1分19秒0)をマーク。栗東のヤマタケ記者によると、池江調教師は「この馬は日本レコードを持っているからね。あれはベストパフォーマンスだったと思う。みんな忘れているけど」と語っていたという。
金曜日から週末にかけての雨予報は気がかりだが、それでも例年と比べてダメージは少ないとみる。スピード決着に対応できる先行タイプとして昨年の覇者は外せない。天気や枠順とにらめっこしながら、最終結論を導き出したい。(坂本 達洋)
叩き良化型「上積みあります」
○…昨年に続く連覇を狙うママコチャは好気配だ。前走のセントウルSは2着だったが、池江調教師が「爪を傷めたのが痛かった」と振り返るように仕上がり途上での一戦だった。叩き良化型で、今回も「上積みはあります」とトレーナー。追い切り翌日の26日は運動のみの調整で整えた。