◆第2回ジャパンCダート・G1(2001年11月24日、東京競馬場・ダート2100メートル、良)
優勝 クロフネ(武豊騎手、栗東・松田国英厩舎)
2着 ウイングアロー(横山典弘騎手、栗東・南井克巳厩舎)
3着 ミラクルオペラ(幸英明騎手、栗東・領家政蔵厩舎)
先週、「ウイングアロー死す」というニュースが流れてきた。ジャパンCダート(現在のチャンピオンズC)の初代覇者で、同じ2000年にはフェブラリーSも優勝。20世紀最後の砂の王者だった。そのウイングアローは翌2001年のJCダートで連覇を狙っていたが、その夢は一頭の芦毛の猛者にあっさりと打ち砕かれた。
創設2年目のJCダートは、ダートの本場・米国からリドパレスという大物が参戦。がぜん盛り上がった。9月上旬のウッドワードSで2000年の米年度代表馬ティズナウなどを抑えて優勝。日本競馬を熟知するフランケル厩舎が送り込んできた実力馬だけに、本気度は十分に思われた。
一方、その秋、天皇賞へ出走するプランがあった3歳馬クロフネだったが、当時存在した外国産馬の出走枠「2」のルールに阻まれる。賞金不足のため、矛先をダートのマイル戦・武蔵野Sへ。これが衝撃の序章だった。初ダートで1分33秒3という芝並みのレコード勝ち。2着イーグルカフェに9馬身差をつける圧巻の走りだった。
このパフォーマンスを支持されたクロフネが1番人気。当然だった。2番人気にリドパレス、3番人気が前年勝ち馬ウイングアローだった。レースはディグフォーイット、ジェネラスロッシのアメリカ勢が引っ張り、リドパレスは好位を追走した。
レースが動いたのは向こう正面だった。2コーナーまで後方待機策のクロフネは、武豊の機敏な判断で押し上げて、3コーナーではリドパレスをかわすと、4コーナーでは早々と先頭へ。超絶なスパートに、15頭は置き去りにされてしまった。直線は独走状態。2着のウイングアローに7馬身差をつけて、ゴールに入った。
「少し早いかなと思いましたが、気分よく行かせた。乗っていただけ。今日に限っては、こんなに強い馬はいないと思わせる」。コンビを組んでいた武豊は絶賛した。ドバイ・ワールドCへ視界は広がった―。そのはずだったが、1か月後、屈けん炎を発症していることが判明し、電撃引退した。ダート初参戦から、わずか2か月の出来事だった。ドバイWC、米BCクラシック…。一度でいいから、世界の舞台で衝撃の走りを見てみたかった。(吉田 哲也)=敬称略=