カナダでデビュー5年目を迎える福元大輔騎手(23)は世界の競馬を見据えていた。昨年はカナダでダービーに相当するクイーンズプレートSを日本人として初制覇。日本ではJRA競馬学校を不合格になったものの、異国の地で才能を開花させた。1月27日に所用で滋賀・栗東トレセン事務所を訪問。「(日本で乗ることは)今は(具体的には)考えていないけど、世界の競馬のなかに日本の競馬もある。日本でいずれ乗りたい気持ちはあります」と将来的な展望について明かした。
カナダ競馬は例年、12月中旬から4月中旬がシーズンオフ。昨年の同時期には開催中の米国に渡って騎乗していたが、今年はコロナ禍の影響で渡米できなかったこともあり、帰国していた。海外でもまれてきたからか、年齢以上に落ち着いた雰囲気を感じさせる。「コロナもあるのでカナダに帰ることになると思いますが、ヨーロッパで乗ってみたいし、アメリカでも乗りたい。世界で活躍したいですね」と力を込めた。
国によって様々な競馬の文化がある。日本の中央競馬は滋賀と茨城のトレーニングセンターで馬の調教を行っているが、カナダでは米国と同様に競馬場で調教を行う。レースは短距離が多く、「折り合いというよりもスピード競馬ですね。1800メートルとかだとだいぶ長いイメージです」。日本ダービーは芝2400メートルだが、カナダ版ダービーはオールウェザー2000メートルで行われる。昨年、コンビで制したマイティーハート(キャロル厩舎)は生後2週間ほどで左目を失い、特殊なブリンカーをつけて出走している。日本でも隻眼の競走馬が出走したことはあるが、カナダでは隻眼馬が世代トップに立った。
15年にカナダに渡り、17年に騎手免許を取得。18年、19年には優秀見習騎手賞を受賞し、昨年はダービー制覇と順調にキャリアを重ねている。「カナダは馬のレベルも騎手のレベルも高いですね。ダービーを勝てたのが大きかった。他にもいい馬に乗せてもらえることが増えたし、自分の知名度も上がりました」。約2年ぶりに日本に帰国し、九州の実家にも顔を出した。「日本っていいなと思いますね」とつかの間のリフレッシュ期間を過ごしている。まだまだ伸び盛りの23歳。世界をまたにかけた活躍が期待される。
(記者コラム・牟禮 聡志)