【天皇賞・秋】エフフォーリアV 横山武史騎手「人生で初めてうれし泣きしました」史上初親子3代制覇

力強く抜け出して天皇賞を制したエフフォーリア(右)。横山武は右腕を突き上げて喜びを爆発させた
力強く抜け出して天皇賞を制したエフフォーリア(右)。横山武は右腕を突き上げて喜びを爆発させた

◆第164回天皇賞(秋)・G1(10月31日、東京競馬場・芝2000メートル、良)

 第164回天皇賞(秋)・G1は10月31日、東京競馬場の芝2000メートルで行われ、3番人気の皐月賞馬エフフォーリアが直線で豪快に抜け出し、G1・2勝目を手にした。3歳馬の秋の盾制覇は19年ぶり。鞍上の横山武史騎手(22)は先週の菊花賞(タイトルホルダー)に続く、2週連続のG1制覇で史上初となる騎手による親子3代天皇賞Vも成し遂げた。管理する鹿戸調教師も初の盾制覇。古馬を蹴散らした“若き王者”は有馬記念(12月26日、中山)で再び頂点を目指す方針。

 府中の悔しさは府中で晴らした。残り150メートル。エフフォーリアは前にいたグランアレグリアを外からとらえると再加速。後方から来たコントレイルに並びかけることも許さない。3歳牡馬が3強のデッドヒートを制し、1着でゴールした。「余計なことをしないで、馬の力を信じて乗るだけでした」。横山武は何度も右手でガッツポーズし、「おっしゃー!」。絶叫が曇天の空に響いた。

 シャフリヤールに差されて鼻差2着の悔しさにまみれた日本ダービーから中153日。その間、エフフォーリアへの信頼はさらに深まっていた。「パワーもついたし、春よりオンとオフがはっきりするようになっていた。多少外を回ってもいいと思っていました」。祖父の富雄さん、現役の父・典弘との史上初となる親子3代の盾制覇の偉業も見事成し遂げた。

 同時に、トラウマのように脳裏に焼き付いていた黒星へのリベンジも果たせた。「ダービーのこともあったので人生で初めてうれし泣きしました」。今でも「思い出したくもない」と話すダービー。5月30日のダービー当日以降、1か月近く白星から見放された時もあった。「ショックもあったかもしれません」。だからこそ、あふれる涙の粒が鹿毛の馬体にこぼれた。

 地道に騎手としての土台を築き上げてきた。デビュー当初は利き手ではない左手で箸を使い、ご飯を食べた。左脳だけでなく、右脳を働かせる訓練だ。「どうして左手を使うのか聞くと、バランスよくするためだと。今では左でも普通にご飯を食べているけどね」と師匠の鈴木伸調教師。競馬学校時代には日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)での訓練で約30度あるバンクに挑戦し、転倒し負傷したこともある。自分に決して壁をつくらない22歳はさらに飛躍する。

 5年目の今年は皐月賞を同馬で制し、菊花賞をタイトルホルダーでVと、G1・3勝。「5年間の中で一番濃い1年なのかなと思います」。次走は有馬記念の予定だ。「(距離は)あと500メートル延びる。一層折り合いを大事にしていきたい」。ダービーの借りを返したコンビは年末も競馬ファンを熱くする。(恩田 諭)

 ◆エフフォーリア 父エピファネイア、母ケイティーズハート(父ハーツクライ)。美浦・鹿戸雄一厩舎所属の牡3歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算成績は6戦5勝。通算獲得賞金は4億3327万6000円。主な勝ち鞍は21年皐月賞・G1、共同通信杯・G3。馬主は(有)キャロットファーム。

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