JRAは3日、競馬開催中に通信機器(スマートフォン) を不適切に使用し、競馬の公正確保に関する業務上の注意義務を怠ったとして、今村聖奈(19)、永島まなみ(20)、古川奈穂(22)、小林美駒(18)、河原田菜々(18)、角田大河(19)の6騎手を5月13日から6月11日まで30日間(開催日10日間)の騎乗停止にしたと発表した。すべてデビュー3年目までの複数の騎手が同時に処分される異例の事態となった。
G1シーズン真っただ中に、水を差す不祥事が起こった。4月23日、開催中だった福島競馬場の職員から「女性ジョッキールーム(控室)で騎手がスマートフォンを使用している疑いがある」と報告があり、問題が発覚した。
永島、小林美、河原田の3人は同日最終レース終了後の聞き取りで、騎乗馬のレース動画やオッズを閲覧するため通信機器を使用していたと認めた。その後、古川奈も同様に使用が判明。今村は同日、京都競馬場での使用が認められたほか、前日22日夜に京都市内の認定調整ルームにいた角田河からかかった電話で会話していたことも分かった。JRAの聞き取りに角田河は「騎手同士なら大丈夫という認識だった」と答えたという。
6人は日本中央競馬会競馬施行規程第147条19号「競馬の公正確保について業務上の注意義務に違反した者」に該当すると認定され、開催10日間の騎乗停止処分が科された。JRAは6人のスマートフォンの通信履歴を調べたが、外部との通信や通話は確認されなかった。いつから不適切な使用が行われていたかは、正確な日付が判明しないため発表されなかった。
競馬場や騎手の宿泊場所となる調整ルームでは、競馬の公正を期すため外部との接触の禁止を目的に、入室後の携帯電話使用が禁じられている。通信機器を使っての動画などの閲覧は、あらかじめダウンロードしたものに限られ、閲覧したい旨を担当職員に届け出る必要がある。当然、開催中の競馬場でレースの合間に過ごすジョッキールームには持ち込むことも固く禁じられている。
JRAの久保厚審判部長は「今回の事案はジョッキールームに持ち込んでいたことが重大と判断。管理が足りなかった部分は反省している。ジョッキールームの監視を強化するなど、再発防止に努めていきたい」と話した。今後は全騎手を対象に聞き取りを行い、必要ならスマホの履歴も調べるとしている。
今村は昨年、新人騎手として歴代5人目の50勝に到達し、女性騎手の年間最多記録を更新する51勝をマーク。2年目も先週まで15勝と順調に勝ち星を伸ばしていた。永島は今春の福島で7勝を挙げ、初めて開催リーディングを獲得。さらなる飛躍が期待されている中での長期戦線離脱となる。
○…古川奈は3日夜、自身のインスタグラムを更新。今回の件で処分を受けたことを説明し、「自身の認識の甘さにより、多くの皆様にご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした」などと謝罪した。
◆JRA女性騎手 現役は美浦2人、栗東4人の計6人。16年に藤田菜七子が16年ぶりの女性騎手としてデビューして以来、21年に永島、古川奈、22年に今村が続き、今年3月には小林美、河原田の新人2人が入った。今回は藤田をのぞく5人が処分を受けた。