◆第61回報知杯弥生賞ディープインパクト記念・G2(3月3日、中山競馬場・芝2000メートル)
皐月賞トライアルの第61回報知杯弥生賞ディープインパクト記念は3月3日、中山競馬場で行われる。昨年のホープフルS2着馬シンエンペラーが始動。矢作芳人調教師(62)=栗東=が“世界制覇”も視野に入れる良血が、レース史上初の外国産馬Vを狙う。ダノンエアズロックは今週が短期免許でのラスト騎乗となるレイチェル・キング騎手(33)=英国=との新コンビで無傷3連勝に挑む。
揺るぎない信頼を胸に第一歩を踏み出す。シンエンペラーは賞金的に春2冠への出走に不安はないが、報知杯弥生賞での始動を選択。矢作調教師は力強い口調で、参戦の意図を説明する。
「弥生賞は本道だから、使うならそこだと思っていました。強いメンバーになるけど、皐月賞、ダービーではやることになる。最近の日本競馬は数を使わない傾向があるけど、あの馬には経験が必要なんです」
自らの目で“ダイヤの原石”を見つけた。昨年8月のフランス・ドーヴィル1歳セール。凱旋門賞馬ソットサスの全弟という血統以上に、身のこなしに目を奪われた。
「軽さだね。血統的にはもっと重いイメージを持っていたけど、歩きとか暴れた時の格好がすごく運動神経のいい馬だな、と。セリでも大本命中の大本命でした」
210万ユーロ(当時のレートで約2億8000万円)で落札された逸材への手応えは日増しに深まっている。昨年11月の新馬戦は好位から上がり33秒8の末脚を繰り出しての快勝。続く京都2歳Sで1着、G1のホープフルSでも2着と好走を続けた。
「新馬はちょっと驚いた。瞬発力勝負をこなしてくれるかなと使ったけど、期待以上。確信しましたよ、あれで。実は新馬が一番状態が良かったかな。今回もまだ成長途上という雰囲気。でも今はそれでいいかな」
「世界のYAHAGI」と呼ばれるようになったが、外国産馬は05年の開業当初から積極的に預かった。結果が出ずに厳しい声も耳に届いた。だからこそ、60回の歴史を誇る報知杯弥生賞で一度もない外国産馬による勝利を狙うだけでなく、無限の可能性を秘めた世界的良血への思い入れは強い。
「色々な過去の失敗が生きた馬かな、と。ただ、本質的にはヨーロッパの馬場に向いている走りだとは思いますよ。ヨーロッパの血統だから、ある程度使い込んだ方がいいということで6戦目がダービーになるように考えての使い出しです」
馬主は先週のサウジダービーを勝った管理馬フォーエバーヤングと同じ藤田晋氏。二人の視線の先は日本の枠には収まらない。
「目標はダービー。いや、大目標は凱旋門賞だな」
もうすぐ、壮大な夢が動き出す。(山本 武志)