◆第19回ヴィクトリアマイル・G1(5月12日、東京競馬場・芝1600メートル、良)
第19回ヴィクトリアマイル・G1は12日、東京競馬場で行われ、14番人気で単勝2万860円のテンハッピーローズが制す大波乱。デビュー21年目の津村明秀騎手(38)=美浦・フリー=は涙のG1初勝利を飾った。WIN5も的中1票で4億4605万7430円と史上4位の高配当となった。
信じ抜いて夢をつかみ取った。テンハッピーローズと真っ先にゴール板を駆け抜けた津村は、高々と右手人さし指を突き上げた。デビュー21年目、48回目の挑戦で、ついにG1勝利を成し遂げた瞬間だ。ウイニングランでは笑顔がこぼれたが、スタンドの大歓声、そして検量室で次々と祝福を受けるにつれて一気に熱いものがこみ上げてきた。直後のインタビューでは「いやもう、無我夢中でした。直線がすごく長く感じて…」と歓喜の涙を抑えきれなかった。
単勝2万860円のブービー人気でも、チャンスを確信していた。五分のスタートからスムーズに流れに乗って、じっくり後方で脚をためた。「しまいの脚は確実なので、頑張ってくれると思っていた。冬場より暖かくなると調子を上げてくるので、具合は良さそうだった」と鞍上。直線で大外に持ち出すと、驚くほどの抜群の手応えで前をのみ込み、2着のフィアスプライドに1馬身1/4差をつけて重賞初勝利を初めて挑んだG1の舞台で飾った。
パートナーとは5戦連続のコンビで、前走の阪神牝馬Sは6着だったが、津村は「もともとかかる面があって1400メートルがちょうど良かったが、(マイルで)大丈夫な感触がつかめた」と自信を持っての参戦。テーオーパスワードを送り込んだ米G1・ケンタッキーダービー(5日)で5着になり、サウンドビバーチェとの2頭出しで勝負をかけた高柳大調教師も「競馬を教えていきながら、徐々に距離を延ばしてきた。ポテンシャルがあるのは分かっていた」と大喜び。今後は未定だが、G1馬として注目を集める立場になる。
千葉県船橋市出身で、競馬好きの父親の影響で興味を持ち、小学5年生から中山競馬場の乗馬苑に通い始めて騎手を志した。美しい騎乗フォーム、誰からも愛される人柄で地道に白星を重ねたが、カレンブーケドールでの3回の2着(19年オークス、秋華賞、ジャパンC)など、なかなかG1に手が届かなかった。「もう勝てないかもしれない」という思いを打ち消し、気持ちを奮い立たせてくれたのは最愛の家族。妻と2人の息子はこの日、サッカー・Jリーグの観戦に出かけていたというが、「家族の支えが一番大きかった。早くみんなを抱きしめたい」と心の底から感謝。馬と人を愛し、愛され、最高の恩返しができた。(坂本 達洋)
◆津村 明秀(つむら・あきひで)1986年1月5日、千葉県船橋市出身。38歳。2004年3月に美浦・鈴木伸尋厩舎からデビューして、06年のラジオNIKKEI賞(タマモサポート)で重賞初制覇。JRA通算1万1237戦653勝(うちG1・1勝を含む重賞18勝)。身長168センチ、体重51キロ。血液型O。家族は妻と2男。自身も大のサッカーファンとして知られる。
◆テンハッピーローズ 父エピファネイア、母フェータルローズ(父タニノギムレット)。栗東・高柳大輔厩舎所属の牝6歳。北海道・千歳市の社台ファームの生産。通算24戦6勝。総獲得賞金は2億6885万3000円。重賞初勝利。馬主は天白泰司氏。