◆第85回オークス・G1(5月19日、東京競馬場・芝2400メートル)
牝馬クラシック第2戦、第85回オークス・G1は19日、東京・芝2400メートルを舞台に行われる。史上18頭目となる桜花賞との2冠を目指すステレンボッシュを管理する国枝栄調教師(69)=美浦=は、アパパネ、アーモンドアイと2頭の3冠牝馬を送り出した。JRA調教師最多となる3度目の「同一年牝馬クラシック2冠」へ、揺るぎない自信をみせた。
名伯楽は静かに、力強く宣言した。「今回は自信があるよ」。桜花賞馬ステレンボッシュをオークスに送り出す国枝調教師は、アパパネ(10年)、アーモンドアイ(18年)と2頭の3冠牝馬を管理してきた。女傑を育て、一番近くで見てきたエキスパートだからこそ、その言葉の意味は大きい。
「アパパネとアーモンドアイは牝馬なのにガッシリしたところがあった。ステレンボッシュも同じで、メンタルの不安がない。牝馬は普通カッとするところがあるけどね」。繊細な牝馬らしからぬずぶとさは、名馬の証しだ。
オークスの舞台は東京の芝2400メートル。前走から800メートルの延長になるが、一切の不安はないという。「桜花賞組はみんな同じ条件だから。それに、体のつくりも胴伸びのいい筋肉で、ピッチで走る馬じゃないし、延長も東京もいいんじゃないかな」
桜花賞のレース内容も自信を深めるものだった。「前から出し抜けて勝ったりした馬だと延長に不安もあるけど、ステレンボッシュは普通に走る馬だからね」。その分析通り、過去10年の桜花賞馬でオークスを大敗したのは4角5番手以内の先行策で勝った馬ばかり。今回のように差して勝った馬は全て2着以内に入っている。
1800メートル以上の距離を勝ち上がってきた別路線組はどうだろうか。トレーナーの見立ては明確だ。「牝馬は仕上がりが早くて、先に活躍している馬がそのまま強い。牡馬だと遅くから覚醒する馬もいるけどね。牝馬はおマセさんなんだよ。だから、桜花賞を使えている馬が能力的には上だね」。過去20年のオークス勝ち馬のうち15頭が桜花賞組。王道を歩んできたアドバンテージは大きい。
状態も申し分ない。1週前追い切りの8日は、戸崎を背に美浦・Wコースでその日2番目に速いラスト1ハロン11秒1をマーク。馬なりながら抜群の切れ味に、初コンビの鞍上も「芯もしっかりしていますし、跳びも軽くていい感じでした。距離も問題ないと思います」と、手応えを口にした。
トレーナーも「良かったよ。トラブルはないし、動きも雰囲気もいい。乗りやすい馬だし、乗り替わりも問題ない」。二度あることは三度―、先輩のあとを追うステレンボッシュにとって、ここは通過点に過ぎない。(角田 晨)
◆国枝 栄(くにえだ・さかえ)1955年4月14日生まれ、岐阜県出身。69歳。東京農工大卒業後、78年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。89年に調教師免許を取得して90年に開業。2010年にアパパネ、18年にアーモンドアイで牝馬3冠達成。JRA通算1075勝。JRA・G122勝を含む重賞67勝。調教師の「同一年牝馬クラシック2冠」2度は、松田博資元調教師と並ぶ1位タイ。
◆桜花賞&オークス2冠馬 グレード制導入後の1984年以降、11頭。今年ステレンボッシュがオークスを勝てば、22年スターズオンアース、23年リバティアイランドと3年連続。秋華賞(86年はエリザベス女王杯)も制した牝馬3冠は、86年メジロラモーヌ、03年スティルインラブ、10年アパパネ、12年ジェンティルドンナ、18年アーモンドアイ、20年デアリングタクト、23年リバティアイランドの7頭。
○…オークス当日はモレイラがブラジルのG1騎乗で不在なため、皐月賞をジャスティンミラノで制した戸崎に白羽の矢が立った。「責任重大だなと感じます。2、3冠目を狙えるのはこの馬しかいないですからね」と静かに力を込める。今春G1は大阪杯がローシャムパークで2着、NHKマイルCもロジリオンで3着と3着内率60%と絶好調。ジャスティンミラノと臨むダービーの前にもう一つ大仕事をやってのける。