来月から古巣の兵庫競馬に復帰する小牧太騎手(56)=栗東・フリー=は小倉12Rのモズアカボスで今年初勝利。JRA所属としてのラスト騎乗を最高の形で締めくくった。
地元の九州で小牧太が華々しく“ラストライド”を決めた。来週は騎乗予定がなく、JRA所属としてのラストデー。モズアカボスで臨んだ小倉12Rの直線は、全身全霊で追い、先頭でゴールを駆け抜けた。
「魂の騎乗やったね」と自賛したベテラン。直前の中京記念は11着に終わったが、22年10月2日の中京7R以来、658日ぶりに味わうJRA通算911勝目。「今年の1勝(目)というのがね。最後まで勝てるか分からなかったけど、最後は気持ちです」と馬上で静かに酔いしれた。
検量室前に戻って来ると騎手仲間ら競馬関係者、スタンドのファンから大きな拍手を浴びた。“泣き虫”としても知られるが「今日は泣かんで」。その後のセレモニーでも涙を流すことなく、笑顔で前を見据え続けた。
史上初となるJRAを挟んでの地方復帰。「ここ5、6年は騎乗馬が回って来なくて悔しい思いをした。ただ、体は元気だし、元に戻って、園田だったらできるんじゃないか」と古巣復帰の決意を固めた経緯を改めて明かした。「他のジョッキーにも新たな道ができたと思う」とも呼びかけた。
「園田に来るファンは昔の小牧太を見ていると思う。その姿に恥じないように、昔の自分に負けないように」と力を込め、「もう1回試験を受けて中央に挑戦したい」と笑いも誘ったベテラン。9月に57歳を迎えるが、まだ道半ば―。小牧太の騎手生活には、この言葉がピッタリ来る。(戸田 和彦)
<長男加矢太は福島1R勝利後、大急ぎで小倉へ>
○…小牧太の長男・小牧加は、福島1Rを勝ってから大急ぎで小倉へ向けて移動。弟で兵庫競馬所属の毅調教師らとセレモニーに参加した。父に花束を手渡して記念写真に収まり、「引退式ではないので、園田でこれからも乗るでしょうから」と新たな挑戦を始める姿を目に焼き付けた。「父は九州(鹿児島)出身。この地でこんなに温かい雰囲気で見送ってもらえてよかった」と感慨深げだった。
小牧ひかりさん(長女でバレット)「最終レースを勝ってうれしかったです。いつもと変わらない一日でしたが、さすがに最後はうるっときました。JRAから園田に移るのは、少しさみしい気持ちです。でも、本人が一番生き生きしているので、自分らしく、頑張りすぎずに頑張ってほしいです」
◆小牧 太(こまき・ふとし)1967年9月7日、鹿児島県出身。56歳。85年に兵庫・曽和直栄厩舎から騎手デビュー。兵庫リーディング10回、94年と96年は全国リーディングに輝いた。2004年にJRA移籍。地方通算3440勝、JRA通算911勝。重賞は地方で52勝、JRAでG12勝を含む34勝。弟は兵庫の毅調教師。長男の加矢太はJRA騎手。趣味はホットヨガ。160センチ、52キロ。血液型O。