総合馬術団体で銅メダルに大岩義明選手「やっとたどり着くことができました」最年長48歳の願いとは

馬術の大岩義明選手(写真は2020年)
馬術の大岩義明選手(写真は2020年)

 パリ五輪の総合馬術団体で7月29日、日本が銅メダルを獲得した。馬術競技で日本勢では1932年ロサンゼルス五輪の障害飛越個人で優勝した「バロン西」こと西竹一以来、92年ぶりの表彰台となった。

 一夜明けた会見でメンバー最年長48歳の大岩義明選手=nittoh=の口から出た「われわれマイナースポーツなので認知してもらうことが大事」の言葉を聞き、4年前に大岩選手を名古屋の自宅で取材したことを思い出した。東京五輪を目指していた当時、語っていたのは「日本は馬術の先進国ではない。バロン西さん以来、メダルを取れていないわけですから。全く知らない人が『うわっ』と驚いて、興味を持って見てもらうとしたら、人目につく大きな国際大会で、世界トップレベルの馬と人が集まること。それはオリンピック以外にない」。100年近い沈黙を破ってメダルを取り、「初老ジャパン」の愛称で大きな反響となった。

 ドイツやイギリスを拠点に活動してきた大岩選手が、5大会連続の出場となったパリ五輪で手にした栄誉。LINEで祝福のメッセージを送ると、「やっとたどり着くことができました。ありがとうございます」と返ってきて、うれしさが伝わってきた。

 強い馬術ニッポンであり続けることは、簡単なことではない。まずは生産。大岩選手は「ヨーロッパと比べて日本は乗用馬の生産数が圧倒的に少ない。日本の産地は(岩手県の)遠野など数か所だけ。対してヨーロッパで生産されている乗用馬の数は半端じゃない。日本の競走馬よりも多い。ヨーロッパは生産が盛んだから馬術が強い」と差を説明。続けて「日本の競馬が世界で戦えるようになったのは、生産のレベルが上がったから。馬術で日本が本当に世界レベルになろうと思ったら、生産が盛んになり、若い人がレベルの高い馬に乗るチャンスを得ないと難しい」と話すように、進歩するためには高いハードルがある。

 次に競技会場。総合馬術は馬場馬術、障害馬術、クロスカントリーを加えた3種目で行われるが、「日本でクロスカントリー競技は三木ホースランドパークなど数か所しかできない」。世界トップレベルの大会は自然に近い状態の地形に竹柵、生垣、池、水濠など、6キロ以上のコースに40を超える障害物というスケールの大きなもの。馬術がマイナースポーツの立場である日本では会場自体が少ないことが、ヨーロッパとのレベルの差を埋めることへのネックとなる。

 願うのは日本の馬術と競馬、両方の発展。大岩選手は競馬界ともつながりが深く、「中内田調教師はドイツの僕の厩舎に練習を見に来たことがあります。日本に帰ってきたときは、栗東トレセンに行って中内田厩舎のスタッフさんに馬術的な部分で競馬に使える技術をアドバイスをさせてもらっています」と当時、話していた。「乗馬界と競馬界が一緒にできることがいっぱいある」という大岩選手にとって、そのひとつが馬術での馬へのアプローチを競馬界に伝えていくことである。

 インタビューで大岩選手は「日本の馬術の競技人口が増えてほしい」と何度も言っていた。日本馬術連盟に問い合わせると会員数は約6800人で、他のスポーツに比べて競技者数自体は非常に少ない。

 馬術に興味を持ってもらうには、競技を目にする機会が増えることが大事。馬場馬術の美しさ、クロスカントリーの迫力、障害馬術の巧みな飛越は人を感動させるもの。馬術が盛んなヨーロッパではゴールデンタイムに大会を中継しており、これが競技人口の拡大につながっている。パリ五輪のグリーンチャンネルでの無料放送には感謝しきりで、日本で他の国際大会の中継も増えてほしい。今回の快挙がきっかけになることを願っている。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

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