真夏のスーパーG2・札幌記念を現地取材した馬トクスタッフが、思い出の年を振り返る。
東日本大震災が起こった11年春、ヴィクトワールピサがドバイ・ワールドCを制し、日本に明るいニュースを届けた。その年の札幌記念ではトーセンジョーダンが東北の希望の光となった。鼻差とはいえ、好位から堂々と押し切って着差以上の強さ。島川隆哉オーナーは仙台市に本社を置く会社の社長で、震災後では所有馬で初めての重賞Vを心から喜んでいた。
チームワークも本当にお見事。騎手時代の福永調教師と初コンビの一戦を、当時21歳の三浦が仕上げ人としてアシスト。騎乗停止中だったが函館から札幌に駆けつけ、追い切りでビッシリ負荷をかけた。札幌入りから10日の短期間でも最高の出来で臨み、池江調教師は「陰のMVPは皇成。おかげで間に合わせることができた」と感謝した。
島川氏に喜びの声を聞くと、第一声は「ジョーダンからコマだね」。意外な所から意外な物が出る例えを馬名にかけたジョークだが、1番人気での勝利だから、「ちょっと違う」とツッコミを入れたかった。ところが次の天皇賞・秋は7番人気でレコードV。意外な伏兵としてG1初制覇する予言だったと、今となっては思う。(内尾 篤嗣)