◆京成杯AH追い切り(9月4日、美浦トレセン)
サマーマイルシリーズ最終戦(第4戦)、第69回京成杯オータムH(8日、中山)の追い切りが4日、東西トレセンで行われ、秋の始動戦を迎えるアスコリピチェーノが抜群の動きを見せた。春のG1連続2着の雪辱へ、3頭併せから瞬時に加速して前を抜き去った仕上がりと成長ぶりを、角田晨記者が「見た」。
これほどの“瞬間移動”は初めて見た。午前5時過ぎの美浦トレセン。カクテルライトに照らされたWコースの直線で、3頭併せの最内を進んでいたアスコリピチェーノは鞍上の北村宏(レースはルメール)に軽く仕掛けられた途端、僚馬2頭の1馬身前へ移動した。「ん!?」。連日の不摂生がたたってついに錯覚したかと思ったが、夢ではない、現実だ。
慌てて確認すると、ラスト1ハロンは11秒0(6ハロン82秒3)。2位に0秒2差つけるこの日の最速で、自身のベストもコンマ1秒更新していた。栗東での桜花賞1週前追い切りを含め何度も見てきたが、明らかに今回が一番いい。1週前も同様に3頭合わせの最内で素晴らしい伸びを披露しており、黒岩調教師の「今週の方がバランスが良かったし、動きの重さも取れた」という言葉通り、完璧な動きになったと言っていい。
ダイワメジャー産駒らしく牝馬にしては馬格があり筋肉質な馬体だが、ひと夏を越してさらにパワーアップ。トレーナーが「ゴツくなっている」と話すように、筋肉はパンパンに盛り上がっている。そもそもの反応の良さにさらに磨きがかかっての“瞬間移動”なのだが、バランスの良さは失われていない。黒鹿毛も相まって、その姿は彫刻のよう。ため息がこぼれるほど美しい馬体だ。
元より精神面が強い馬で、乗り込み量豊富な黒岩厩舎の調整に耐えながらもカイバ食いは落ちないタフさが売り。レースでも根性の強さは随所に見せており、前走のNHKマイルCでは狭い内で鞍上が立ち上がるほどの不利を受けながらもそこから伸び返した。超一流のメンタルが完璧なフィジカルと一体になったとき、どんなレースを見せてくれるのか―。週末の中山が楽しみになってきた。(角田 晨)