◆第170回天皇賞・秋・G1(10月27日、東京・芝2000メートル)
第170回天皇賞・秋(27日、東京・芝2000メートル)で、今年いっぱいでの引退を表明しているドウデュースの最終章が始まる。多くのファンを魅了するスーパーホースを管理する友道康夫調教師(61)=栗東=は「(舞台は)一番いいと思う」と自信を持って送り出す。昨年は直前のアクシデントで騎乗できなかった武豊騎手(55)=栗東・フリー=も雪辱を期す。
厚い信頼は最後まで全く揺らがない。いよいよ始まるドウデュースの最終章。今年は2戦未勝利だが、友道調教師は17日に武豊騎乗の1週前追い切り後、満足そうな表情で愛馬を見つめた。
「追い切り後に豊ジョッキーと『こういう馬珍しいですよね。追い切りでも走って、本当に波がない』と話しました。本当に調教でも競馬でも、いつも真面目に走ってくれる。負けるのは馬場や展開などで力を発揮できなかった時。いつも、状態面に関しては自信満々で送り出しています」
昨年は武豊が当日の他のレース後、騎乗馬に右足を蹴られたために急きょの乗り替わり。戸崎との緊急コンビで臨んだものの、7着に敗れた。
「ちょうど、蹴られた直後の検量室前に行ってたんですよ。視線を感じるので何かなと思ったら、向こうで豊ジョッキーが座って、足を冷やしていた。えっ、どうしたの?という感じでした。その時は本人から大丈夫と聞いたけど、その後に無理だと連絡が…。やはり、乗り替わったというのは大きいと思いますよ」
昨年に続き、ここからジャパンC、有馬記念の古馬王道G13連戦を視野に入れるラストシーズン。昨年は最後の有馬記念で復活の勝利を挙げた。
「G13連戦は(状態面で)正直、無理だと思っていました。豊ジョッキーで天皇賞、ジャパンCなら、有馬はなかったかもしれない。当時は言ってなかったけど、距離などから香港(カップ)を考えていたんですよ。ただ、香港なら(有馬から)前倒しになるので、豊ジョッキーが乗れないという話で(なくなった)。松島オーナーの信念はすごい。それが有馬で実ったんじゃないかなと思います」
ただの始動戦ではない。今だけでなく、先も見据える友道師には結果を出したい理由がある。
「種馬ということを考えた時、2000メートルは勝ちたい。マイルでも2400メートルでもG1を勝っているし、あとは2000メートル。特にマイルと2000メートルを勝つのは大きい。それに2~5歳と4年連続でG1を勝った馬は少ないらしいので、早い時期から走りつつ、成長力があるという点も種馬の大きなアドバンテージになると思う」
この勝利こそ、次のステージをさらに輝かせる“ラストピース”になる。
「東京の2000メートルは一番いいと思う。1週前追い切り後に『人馬無事にゲートインしてほしい』と話しましたよ。ドウデュースの馬上には豊ジョッキーが一番合っていますからね」
レジェンドにすべてを託し、譲れない戦いがもうすぐ始まる。(取材・構成 山本 武志)
浮き沈みがあるところも愛される理由
今までにない感覚を味わってきた。ドウデュースと歩んできた3年余り。友道調教師は驚いたことがある。「ファンからの手紙や贈り物が本当にすごく多い。今までやってきた馬とは全く違う」
ファンレターは単なる応援だけではない。むしろ道悪で大敗した一昨年の凱旋門賞後や、現地で出走を取り消した昨年のドバイ遠征後などの励ましの方が多かった。「ずっと順調な成績じゃない、浮き沈みがあるところがいいんじゃないかな」。起伏に富んだドラマがあるからこそ競走生活は輝き、多くの人に愛された。
7月に年内引退を発表後には「ドウデュースはもっと走りたいと思っています」という引退撤回を求める手紙も届いた。「ファンの声を感じられるというのはありがたいですよね」。感謝の思いを胸に、最後まで全力で愛馬と向き合っていく。
(山本 武志)