◆第80回皐月賞・G1(4月19日・芝2000メートル、中山競馬場)
牡馬クラシック第1弾の皐月賞(19日、中山)で、12年ぶりの「夢」を追う人々がいる。ガロアクリークを送り出した笠松牧場(北海道浦河町)は、生産者として2008年の日本ダービーを勝ったディープスカイ以来のG1制覇を目指す。
北海道浦河町にある1964年設立の笠松牧場は、89年に水上行雄氏が代表になってからちょうど20年目の08年に日本ダービーを制し、世代の頂点に立ったディープスカイの生まれ故郷だ。あの栄冠から12年。再び大舞台での夢をつかもうとしているのが、豪脚でスプリングSを制したガロアクリークだ。
17年2月27日に誕生したキンシャサノキセキ産駒は、前走勝利時の馬体重が496キロ。荒れた馬場をものともせず差し切ったパワーは、当歳の時から一端をのぞかせていた。「馬格があって丈夫。特に大きなけがや病気もなく、健康的な子供でした」と、行雄代表の長女である水上千歳さんは振り返る。
デビュー戦は19年11月の東京。千歳さんが「気持ちの強さがあり、走ることに前向きで従順だった」と牧場時代に感じた才能を、証明するかのような走りっぷりだった。手綱を執った野中の指示に4角でスッと反応したかと思えば、直線で後続を一気に突き放す快勝劇。短距離で活躍した父からは想像もしていなかった2000メートルでの初陣Vだった。
その後の2戦こそ結果は出なかったが、4戦目の皐月賞トライアルを6番人気で制覇。一気に大舞台への視界が開けても、千歳さんは自然体で構えている。「まずは順調な調整過程を踏んで、ゲートインするまで無事にいってほしい」
新型コロナウイルスの影響で牧場からも競馬場に足を運べず、現地での応援はかなわない。それでも「通常ならば誰かが競馬場に行ってしまうけど、みんなそろってテレビの前で応援できる喜びもある」と千歳さん。画面越しにスタッフ全員で送る声援の先に、再びのG1タイトルが待っている。(石行 佑介)
◆笠松牧場 JRAに在籍する生産馬は14日現在で34頭おり、先週12日の中山11R・春雷Sをラヴィングアンサー(牡6歳、栗東・石坂正厩舎)が勝利。JRA重賞はG1・2勝を含む5勝。ディープスカイが08年にNHKマイルCと日本ダービーの「変則2冠」を達成した。代表の水上行雄氏はガロアクリークの馬主も兼ねるが、同馬がJRA重賞初勝利だった。