「2022サウジカップデー」の諸競走が日本時間の26日深夜、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で開催される。世界最高の優勝賞金約11億円を誇るメインのサウジカップ・G1(ダート1800メートル)に日本のマルシュロレーヌが参戦。米国のブリーダーズカップ(BC)ディスタフに続く海外G1連勝が懸かるラストランに挑む矢作調教師に意気込みなどを聞いた。
ホースマンとしての強い思いが生んだ決断だった。矢作調教師がマルシュロレーヌのラストランとして選んだのはサウジC。世界最高額となる優勝賞金約11億円の大一番だ。
「夢を追って、夢をつかんだ馬だから、最後まで夢を追いかけたいなという気持ちですね」
初めて海を渡った昨年11月。ダートの本場、アメリカのブリーダーズCディスタフを制し、世界中を驚かせた。
「自分から動いて、直線でもたせたわけだから、地力がないとできないパフォーマンス。フロックと思っていないです。アメリカのダート牝馬チャンピオンだから、引退戦はそれだけの格のレースを走らせたかった」
浪漫を追いかけるだけではない。サウジアラビアは昨年(ジャスティンのリヤドダートスプリント=6着)に続く2度目。当然、今までの海外遠征と同じように、確かな戦略に基づいている。
「この馬にとっての走りやすい条件ということ。(BCと)同じ左回りで、日本とは違うダートの1800メートルも同じ条件。(現地は)米国の馬場とオールウェザーの中間みたいなイメージを持っています。時計の出る馬場という点でも米国のダートに近いかなというイメージ。もちろん、マルシュのこなせる馬場だと思っています」
ターニングポイントは4歳夏だった。条件戦とはいえ、芝で2着と好走した後、初のダート投入に踏み切った桜島S(3勝クラス)を快勝。一発回答で名牝への道が始まった。
「よくぞ使ったよな、と。大きな転機だった。あそこであの決断をしなければね。俺一人じゃない。助手の助言がなければ踏み切れませんでした。それで歴史が変わっていたわけで、『持ってる』よね。うちの厩舎ならではだと思うし、そのチーム力で彼女の助けにはなったのかなと思います」
徐々に迫ってきたラストラン。昨秋からコントレイル、ラヴズオンリーユーと厩舎を支えてきたた愛馬の有終Vを何度も見届けてきた。
「どの馬でも無事にという気持ちはあるけど、特に無事にという部分は強いですよね。今回は厳しい戦いにもなると思う。その中で彼女の力を少しでも発揮してくれればいいかなと思います」
再び夢をつかみ取り、日本競馬の歴史に新たな一ページを加える。
(山本 武志)