◆秋華賞追い切り(12日・栗東トレセン)
燃えすぎることなく、だが闘争心を内に秘めたアートハウスが、静かに準備を整えた。栗東・CWコースで中内田調教師が手綱を執り、単走で6ハロン83秒6―11秒8。雄大なフットワークで直線を駆け抜けた。「調整程度で予定通り。1度、競馬を使って体も良くなりましたし、テンションも上がることなく来ているところは安心しています」と中内田師は万全を強調した。
適度に乗った気合が好調の証しだ。「精神的に落ち着いているところ」と、ひと夏を越えての成長面を挙げたトレーナー。春は前進気勢が旺盛過ぎる点に課題があったが、この日の追い切りでは、序盤のゆったりとしたペースでも前走時より折り合いはスムーズ。1度、レースを使ったことでガス抜きできた印象で、心身ともにフレッシュな状態で大舞台に挑める。
前哨戦を制したローズSを含め2000メートルで全3勝。さらに、忘れな草賞で3馬身差の完勝を飾った阪神2000メートルは絶好の舞台だ。「チャレンジャーの立場」と牝馬2冠のスターズオンアースを筆頭にライバル陣営に敬意を示したが、能力は主役級だ。
16年秋華賞2着の母パールコードを管理したトレーナー、主戦を務めた川田にとっても悲願のG1タイトル。「それが競馬の面白いところ」と“血のドラマ”を表現した師。「ドラマは自然とできてくるものだと思っている。そうなってくれればいいストーリーになるんじゃないかな、と思います」。母の“忘れ物”を娘が取り返す。物語をハッピーエンドで締めくくる。(戸田 和彦)