【秋華賞】スターズオンアースは「別次元の馬だよ」社台ファーム初の3冠馬誕生へ吉田照哉代表自信あり 

社台ファーム初の3冠馬誕生へ、ルメールを背に秋華賞に臨むスターズオンアース(カメラ・橋口 真)
社台ファーム初の3冠馬誕生へ、ルメールを背に秋華賞に臨むスターズオンアース(カメラ・橋口 真)
吉田照哉代表
吉田照哉代表

◆第27回秋華賞・G1(10月16日、阪神競馬場・芝2000メートル)

 史上7頭目の牝馬3冠を目指すスターズオンアース(美浦・高柳瑞厩舎)が、ラスト1冠の秋華賞(16日、阪神)に挑戦する。度重なる試練を乗り越え、社台ファームに4年ぶりのG1制覇をもたらしたドゥラメンテ産駒は名門牧場反撃の旗印でもある。生産馬初の3冠馬誕生にかける関係者の思いを、3回連載で取り上げる。

 * * *

 宮城・山元トレセンで調整されていたスターズオンアースが、桜花賞に向けて美浦トレセンに出発する、まさに数十分前だった。今年3月16日、23時36分。福島県沖を震源とした震度6強の地震が起こった。厩舎の土台が割れ、トレセンも大きな被害を受け、スタッフも動揺した。だが、馬房の彼女は動じた様子もなく、頼もしくたたずんでいたという。

 高速道路も止まっていたが、交通情報をチェックし、何とかルートを確保すると、3、4時間遅れて出発。美浦トレセンに到着した時は、人間の心配をよそに、いつも通りの雰囲気でアクシデントを難なくクリアした。山元トレセンの上水司場長は「けがをした馬もいましたが、無傷だったし、動揺もなかったですね。すごい馬ですよね」。強じんな精神力―。これが快進撃の源だ。

 迎えた4月10日の桜花賞。適距離とは言えない中、ゴール前で狭い間を他馬と接触しながらもひるむことなく割って伸びて鼻差での勝利。社台ファームに4年ぶりのG1をもたらしたその1冠が、悲願3冠への大いなる道筋をつくった。上水場長は「ぶつけられても吹っ飛ばされなかったし、最後はこじあけてきましたよね。気持ちでは絶対に負けない馬。牧場でも併せ馬をしても負けない。そういうところが出ていましたね」と振り返る。

 「距離が延びていいと思っていた」(社台ファームの吉田照哉代表)というオークスでも、他馬の放馬で発走が大幅に遅れるも集中力を切らさず2冠を達成。しかし、両前肢の剥離(はくり)骨折が発表され「3冠に間に合うのか?」と周囲はざわついたが、吉田代表は「骨片はもともとあったんです。痛みはないし、レントゲンにちょこっと映るくらい。オークスが終わったのでこれを機に手術しようとなったんです。いい休みになったよね」とさらり。小さな不安要素もなくなった格好だ。

 G16勝の世界的名馬、スタセリタから生まれた母サザンスターズの2番子。生まれた当初は華奢(きゃしゃ)な面もあったが、山元トレセンに入厩後、デビューまで、そしてデビュー後に変貌(へんぼう)を遂げた。「2歳の5月に馬体が20キロくらい増えましたね。競馬を使い出してからも戻ってくる度に、体もメンタルもどんどん良くなってきました。筋肉の張りとか、筋肉の筋が一本一本太くなっていました」(上水場長)。

 苦難やアクシデントを幾度も乗り越え、社台ファームにとって初の3冠馬誕生が、現実味を帯びている。数々の名馬に携わってきた吉田代表も「休ませても筋肉が全然、落ちない。この馬は別次元の馬だよ」と高く評価する「奇跡の馬」。実は同馬の3冠は、近年、苦渋をなめてきた社台ファームの“逆襲”につながる一歩でもある。(特別取材班)

 ◆追い切りルメール ○…スターズオンアースは11日、南の角馬場で入念に乗り込んだ後、美浦・坂路を66秒2―15秒8で軽快に駆け上がった。2週連続で今週もルメールが追い切りに騎乗する予定で、追うごとに良化してきている。高柳瑞調教師は「(状態は)先々週よりも先週の方が良かったし、段階的に上がってきている感じはする。先週末で480キロ。輸送で減っても、プラス体重になるかな」とイメージ通りの調整にうなずいた。

 ◆3冠馬の生産 14頭が誕生し、ノーザンファームが唯一複数となる最多4頭(牡馬=ディープインパクト、牝馬=アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ)を輩出。社台ファームは2冠馬が4頭(牡馬=エアシャカール、ネオユニヴァース、牝馬=ベガ、ダイワスカーレット)いる。

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