◆第166回天皇賞・秋・G1(10月30日、東京・2000メートル)
G1馬5頭の競演となる第166回天皇賞・秋(30日、東京)には、皐月賞馬ジオグリフと、春2冠連続2着のイクイノックスが参戦。3歳の強力2トップを擁する木村哲也調教師(49)=美浦=が3冠最終戦の菊花賞ではなく、秋の盾取りへぶつけてきた。19年ぶりだった昨年のエフフォーリアに続く2年連続史上5頭目の3歳馬Vを狙っている。
「剛」のエースと「柔」の天才―。木村調教師が自信を持って送り出すのが厩舎の2トップとも言える3歳コンビ、ジオグリフとイクイノックスだ。
ともに春はクラシックに参戦。最終戦の菊花賞を見送った理由を「菊花賞を使ったら(秋に走るのが)1回きりになっちゃうかなと。その後に帰ってくるのにどれだけの時間とリスクがあるのか考えた」と木村師は説明する。距離適性に加え、レースによるダメージなどを考慮、秋の盾に照準を定めた。
「剛」の皐月賞馬ジオグリフは日本ダービー7着。「要所要所で運がなかった。位置取りも弾かれるとか、枠もそう。道中で余分なガソリンを使いながら立ち回らざるを得なかった」と敗因を分析する。「健康優良児」と例えるドレフォン産駒は、レース後に右前第1指骨骨折が判明したが、手術の必要はない軽度で、保存療法を選択。今は負傷の影響はなく元気いっぱいで、「うちのエース」と評価は不変だ。
「柔」のイクイノックスは皐月賞、日本ダービーともに2着。ダービーは上がり3ハロン最速の33秒6の脚を繰り出したが、首差で敗れた。「1コーナーの入り方が良くなかった。そこにつきる」と指揮官。しなやかな脚さばきとスピードは天賦の才。だが、体質が弱く、数が使えずに4戦目がダービー。クラシック2戦を今までにない間隔で詰めて使ったこともあり、レース後には左前脚の腱にダメージがあった。夏を越し、それも回復。「背が伸びた感じがします。全体的な肩回り、前の部分の筋肉がついてきた」。中間の動きにはキラリとセンスを感じさせる。シルバーコレクター返上の時は来た。
2週前追い切り後には「ジオグリフは学校が終わったらランドセルをぶん投げて遊びにいくような感じ」と順調さを強調。一方で「イクイノックスは学校が終わって帰ってきたら(家で)話を聞いてあげないといけない感じ」と気遣いが必要な対照的な仕上がり。そこから後者は1週前追い切りにルメールがまたがって、「2頭ともレールに乗った」と出来は本番に向けて上昇曲線を描く。
「看板馬」は皐月賞馬に導いた福永とのコンビ継続で復権を狙う。「天才」は史上最少の5戦目での古馬G1制覇がかかる。「古馬との対戦は甘くはない。出てくる馬にリスペクトは必要」としつつ、「古馬と3歳の斤量差もある」とも。勝算も期待もあってこその参戦。史上5頭目の3歳Vへ、秋色に色づいた春の主役たちはパワーアップした姿を見せつける。(恩田 諭)