◆第166回天皇賞(秋)・G1(10月30日、東京・2000メートル)
天皇賞・秋(30日、東京)はG1馬5頭以外にも魅力的な実力馬が顔をそろえた。なかでもジャックドールは金鯱賞をレコードで逃げ切り5連勝を飾った快速馬。G1初挑戦だった春の大阪杯で5着に敗れたが、新たな一面を見せたのが、前走の札幌記念だ。「前哨戦レビュー」で、今回につながる収穫大の勝利を振り返る。
強いことは分かっている。では、逃げられなかったときはどうなるのか? ジャックドールに抱いていた“疑問”。それを晴らしたのが札幌記念だった。1着という結果はもちろん、内容にも大きな意味があったはずだ。
絶好の4番枠から、隣(3番)のパンサラッサと先頭争いをするかと思われた。しかし、パンサラッサを行かせて好位追走。藤岡調教師によれば、「意図的」な位置取りだった。3角過ぎから仕掛けて、直線ではやはりパンサラッサとの一騎打ち。ゴール前で首差競り勝った。
今年は良馬場で行われたが、同日の5Rまでは稍重だった。勝ち時計2分1秒2は、過去9年(13年は函館開催)で稍重の16年(2分1秒7)に次ぐ2番目の遅さ。それでも前半は5ハロン59秒5とスローではなく、終盤の持久力が問われる展開だった。さらにライバルにはG1馬5頭。指揮官が「消耗戦になっていた。もう少し楽に勝てたかなと思うけど、相手が強くて粘られた」と振り返るほどのタフなレース。ここを勝ったのは、相当な実力の証しだ。
最後まで競り合ったパンサラッサとは、再び顔を合わせることになった。さらに、1年7か月ぶりだったオールカマーで、4着に粘ったバビットも参戦。2頭の陣営は早くも逃げを示唆しているが、このハナ争いには加わらないかもしれない。
金鯱賞を逃げてレコード勝ちし、ファンからは「サイレンススズカの再来」とも言われた。しかし、スーパーG2であえて戦法変更。藤岡師は「どこかで試さないと、と思っていた。その通りの競馬ができた」と収穫の大きさを強調していた。逃げなくても勝てる。G1初制覇を狙ううえで、それを証明したことは武器になる。(水納 愛美)