◆第39回マイルCS・G1(11月20日、阪神・芝1600メートル)
“ゲルマン魂”は確かに日本競馬に大きな花を咲かせつつある。英国産の父キングマンはG1・4勝のマイラー。シュネルマイスターはスピードを受け継ぎ、昨年のNHKマイルCでG1初制覇。グレード制を導入の84年以降で招待馬を除くドイツ産馬として初のJRA・G1制覇だった。
シュネルマイスターの活躍を支えているのは、母系が誇るスタミナにある。母セリエンホルデは16年に芝2200メートルの独オークス(ディアナ賞)を制覇。切れというよりも、他馬が終盤に脚いろが鈍るなかでも、一頭だけ衰えない。馬体を併せてから再度ギアが上がるような勝負根性も持ち味だ。「(ドイツ血統について)いい印象しかないですよ。ドイツも日本と同じように、全体的なレベルが上がっているんだと思う」と手塚調教師は話す。ドイツ産のトルカータータッソが昨年の凱旋門賞を制し、今年は3着。日本の牝馬クラシック2冠を制したスターズオンアースも祖母スタセリタ(仏オークス馬、ソウルスターリングの母)の母はドイツ産馬。11年ケンタッキーダービー馬で、13年のドバイ・ワールドCを勝ったアニマルキングダムの母はドイツ産。現在は日本で種牡馬供用されており、その産駒は来年デビューする。
世界中で注目されるドイツ血脈。「見た目は重そうに見えるけど、そんなことはなくて、日本の馬場にも適性があると思います」と手塚師が話す舞台でのマイルCSの結果次第では、ドイツ産馬としてさらに明るい未来が開ける。「日本では珍しい血統だから、今後いろんなところで存在価値が出てくると思う」。2度目のG1制覇でドイツ血統のパイオニアとなるか。(恩田 諭)
〈曽祖母が同じサリオスは昨年雪辱狙う〉
○…マイルCSに出走するサリオスは、曽祖母がシュネルマイスターと同じで“はとこ”の関係。世界を席巻するドイツ血脈で、母サロミナも独オークスを12年に制しており、ドイツ血統を引き継ぐ2頭は1800メートルの毎日王冠も制覇していることも共通点として挙げられる。昨年6着に終わったこのレースだが、復活Vを遂げて臨むG1で20年朝日杯FS以来のビッグタイトルをつかむか。