◆第40回フェブラリーS・G1(2月19日、東京・ダート1600メートル、良)
JRA・G1開幕戦の第40回フェブラリーSは19日、東京競馬場で行われ、1番人気のレモンポップが直線で抜け出し1馬身半差の快勝劇。11戦オール連対で頂点に立った。G1初制覇を飾った田中博康調教師=美浦=は37歳2か月15日でレース史上最年少優勝調教師となった。テン乗りで結果を出した坂井瑠星騎手(25)=栗東・フリー=はG1・3勝目で若いタッグが躍動した。
栗毛の馬体を弾ませ、力強く抜け出したレモンポップが新王者誕生を高らかにアピールした。抜群のスタートを決め、内と外から先手を主張するライバルを行かせて好位でしっかり折り合うと、最後の直線では馬なりのまま先頭に並びかけ、外から追い上げるレッドルゼルを1馬身半差で退ける完勝劇だった。
G1初挑戦をスムーズにエスコートしたテン乗りの坂井は「調教でも乗りやすいと感じていましたが、レースでもプラン通りに進めることができました」と振り返る。追い出しをギリギリまで我慢して最高のタイミングでスパート。「最後までよく伸びてくれました」と戦前の距離不安説を一蹴し、「精神的にどっしりしていて、『緊張しなくていいよ』と馬が言ってくれている感じで安心感がある。すごい馬です」とたたえた。G1初制覇だった昨秋の秋華賞(スタニングローズ)、朝日杯FS(ドルチェモア)に続き早くも3勝目を、1番人気を背負った今年のG1開幕戦でマークした。
厩舎開業6年目念願 厩舎開業6年目で初のG1勝利の瞬間を見届けた田中博調教師は「マイルでも1400メートルと同じ競馬ができるかがポイントでしたが、よく頑張ってくれました」と安堵(あんど)の表情。福永が最後だったG1舞台で25歳のホープが見せた冷静な手綱さばきに、「上手にゲートを出して、道中のリズムも本当に良く、堂々たる乗り方でした」と賛辞を贈った。騎手時代の09年、23歳だったエリザベス女王杯(クィーンスプマンテ)でG1初勝利を果たした37歳が、レース史上最年少優勝調教師となった。
11戦8勝、2着3回。オール連対でのVはレース史上初だ。「これから充実期を迎える」という5歳馬が、底を見せぬまま頂点に立った。「マイルの最高峰の舞台でこれだけのレースができて可能性の幅が広がった。レース後の状態をしっかり確認してからになりますが、1200メートルも含めて、オーナーと相談して慎重に選択したい」と田中博師。登録済みのドバイ・ゴールデンシャヒーン・G1(3月25日、メイダン競馬場・ダート1200メートル)も視野に世界を見据える。さらに熟成の時を迎えるレモンポップと若きトレーナーの進撃は止まらない。(松井 中央)
◆レモンポップ 父レモンドロップキッド、母アンリーチャブル(父ジャイアンツコーズウェイ)。美浦・田中博康厩舎所属の牡5歳。米国・Mr.&Mrs.Oliver S.Taitの生産。通算11戦8勝。総獲得賞金は2億8843万8000円。重賞2勝目。馬主はゴドルフィン。
<まじめすぎるほどまじめな「たなぱく」先生>
昨年末、栗東に行くことになった私に送別会を開いてくれた。普段は物静かな田中博調教師に励まされたのはうれしかった。厩舎スタッフが「まじめすぎるほどまじめな調教師。頑張る姿を見ていると、俺らも頑張らないとという気持ちになる」と話すほど、馬に対して真摯(しんし)に向き合う『たなぱく』先生。そんな背中で引っ張る若き指揮官のもと、厩舎が一丸となっているのが快進撃につながっている。騎手時代にエリザベス女王杯で勝った時と同じ4枠7番で調教師として初のG1を勝った。フランスやベルギーなど海外で騎乗した経験も生かし、レモンポップと世界に再び挑む姿を楽しみにしている。(山下 優)