◆第27回ドバイ・ワールドカップ・G1(3月25日、メイダン競馬場・ダート2000メートル)
ドバイワールドカップデー(25日、メイダン競馬場)に日本馬が27頭出走を予定している。前年のジャパンCとチャンピオンズCの覇者の対戦、前年のダービー馬対最優秀短距離馬、そして年度代表馬イクイノックスの初海外参戦と話題は尽きないが、最も注目を集めるのがワールドCに臨むパンサラッサだ。世界最高賞金額のサウジCを制して約13億円を手にし、今回の結果次第で日本調教馬の総獲得賞金トップに躍り出る。大きな挑戦を前に、主戦の吉田豊騎手(47)=美浦・フリー=に意気込みを聞いた。
パンサラッサとともに日本史上初めてサウジCを勝った吉田豊が、ぶれぬ思いを胸に愛馬と再び世界に打って出る。昨年のドバイ・ターフ、香港C、前走に続いて異国で挑む頂上決戦。再び愛馬とともに灼熱(しゃくねつ)の地での戦いに身を投じるが、心はもう決まっている。「相手とかそういうことは関係ない。パンサラッサの競馬をするだけ。うまく導いていければと思う」ときっぱりと言う。
いまでこそ「逃亡劇」が代名詞だが、その形を確立させたのは吉田豊と言っていい。21年10月のオクトーバーS。それまでも逃げることはあってもそこまでこだわってはいなかったが、テン乗りだった鞍上は、思い切ってハナに立って押し切ってみせた。「テン乗りの時は、そのワンチャンスしかない。意外とそういう時の方が思い切った乗り方ができるし、先生もそういう先生なので思い切って乗れた」
そこからは、馬も人も迷いはない。自身のスタイルを見つけた愛馬とともに、3戦ぶりにコンビを組んだ中山記念を逃げ切り、昨年のドバイ・ターフ、前走のサウジCにつなげた。
管理する矢作調教師とは、30年来の縁だ。デビュー年に一度だけ滞在した北海道シリーズで出会い、公私に深い関係を築いてきた。04年にリージェントブラフでドバイWCに挑戦した時は、当時、調教師試験に受かったばかりの矢作師のドバイ行きを手配した。昨年、ドバイ・ターフを勝った時、トレーナーは「18年越しの感謝」と口にしていたが、鞍上も「ドバイでは違う乗り役だろうと思っていました。それでも乗せていただいた。こちらが感謝です。前回は日本の騎手は僕だけだったし、誇らしかったです」と熱い胸のうちを吐露する。
サウジCでは世界最高の優勝賞金13億円をつかみ「サウジドリーム」を実現した。今回、4着以上ならアーモンドアイの日本史上最高獲得賞金を抜き、名実ともに頂点に立つが、「それは全然、気にしていないです。それよりも、そのレースで1着を取ることしか考えていません」。紡いできた絆を力に、異国の地でも信じた道を貫き通す。(松末 守司)