ソダシを手がけた今浪厩務員の心に残る一言「毎日が思い出だった」

ソダシと今浪厩務員。アイドルホースの表情にも、厚い信頼がうかがえる
ソダシと今浪厩務員。アイドルホースの表情にも、厚い信頼がうかがえる

 寂しさと達成感が胸の中を交錯している。白毛の名牝、ソダシをデビューから手がけてきた今浪厩務員が6月末に引退する。9日に安田記念を走り切ったソダシを放牧地へ送り出すと、その2日後の11日には担当馬最後のレースを終えた。

 「安田記念の時はこれで最後か、この後は手入れも何もできないんやなぁ、ということは感じていました。今は少しノンビリしたいという気持ちもあるし、よく今まで頑張ってこれたなというのも感じている。本当にいい人生だったと思う」

 ソダシと寄り添った約3年。海外からも注目されるアイドルホースと過ごした時間は、プレッシャーを感じながらも楽しかった。早朝に馬房の前へ行くと、真っ白な顔をチョコンと出してくる。作業中はつぶらな瞳でおとなしく、ジッと動きを見届ける。青草や牧草を手に近づくと、首を動かしたり、前かきしたりとおねだりする。厚い信頼で結ばれた日々。その中で最も印象的な出来事を聞くと、一瞬の沈黙の後、笑顔でポツリと漏らした。

 「難しいよ。毎日が思い出だったから」

 個人的に忘れられない朝がある。オークスで8着と敗れ、デビューからの連勝が止まった日の翌朝だ。正直、取材へ向かう脚取りは重かったが、誰よりも悔しいであろう今浪厩務員はコロナ禍で入れなかった厩舎の外までわざわざ出て、ソダシの様子を丁寧に説明。その後だった。勝ったユーバーレーベンが、担当したゴールドシップの産駒という話になった時だ。

 「頭の中がゴチャまぜだった。確かに悔しかったよ。だけど、シップの子供が勝った、良かった~という喜びもあったね。もちろん、(勝ち馬が)シップの子だと分かっていたから。シップには走る馬はこうすればいいということを勉強させてもらって、それをソダシにもやっていた。馬体を触って、状態を確かめたりね。だから、シップであり、調教師や厩舎スタッフたちの助けがなければ、ここまでできなかったよ」

 こんな人情味あふれるホースマンも、もうすぐ競馬界を去る。ただ、7月はソダシの半弟で同じく真っ白なカルパのデビュー戦を見るために、昨年まで毎年夏を過ごしていた函館へ。8月下旬にはゴールドシップへ会いに、再び北海道に向かう。

 「ソダシはまだ競馬場にいるし、競馬ができるんだし、それを応援にも行ける。ソダシが頑張っている時に、寂しがってもアカンやろうしね。本当に寂しくなるのは、引退式の時じゃないかな」

 これからも全く変わらない親心を胸に“我が子”の雄姿を見守っていく。愛情に満ちあふれた温かな視線で―。(山本 武志)

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