約2週間後に迫った日本ダービーを終えると、翌週から新馬戦が開始される。栗東トレセン内でも2歳馬が着用する緑色のゼッケンを数多く見かけるようになったが、個人的に注目しているのはソフトバンク・柳田悠岐選手の愛馬(名義はY'sレーシング)。中央競馬担当になる以前の21年まで10年近くソフトバンクを担当していた縁で、勝手に応援させてもらおうと思っている。
プロ野球と競馬。業界は違うが共通するのは、厳しい勝負の世界と言うこと。そこに身を置くからこそ“夢”は控えめだ。「とにかく無事にデビューして、無事に走り切ってくれれば」と願う。15年にトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)を達成するなど球界を代表するスラッガーに成長した柳田だが、振り返れば若手時代は苦しんだ。
10年ドラフト2位で広島経大からソフトバンクに入団。日本人離れした飛距離を誇り、1年目から春季キャンプでA組(1軍)スタートするなど期待を集めたが、ルーキーイヤーの1軍成績は5打数無安打で3三振。「バットにボールが当たらない。すぐクビになるかも知れない」と危機感を覚えたという。そこからの“サクセスストーリー”を書くと、数百行になってしまうので今回は控えるが、基礎になったのは豊富な練習量をこなし、大きな故障なども乗り越えられた丈夫な体があったから。だからこそ「無事」に重きを置くのだろうと感じている。
現在、セイフウサツキ(牡2歳、栗東・松永幹夫厩舎、父サトノクラウン)とゴッドヴァレー(牡2歳、栗東・渡辺薫彦厩舎、父アルアイン)が栗東トレセンに入厩。14日の朝は2頭ともに元気に坂路をキャンターで駆け上がっていた。セイフウサツキを担当する額田助手は、偶然にも福岡県出身でホークスファン。「もう少し成長を促した方がいいかな、とも思いますが、乗った感触だとキャンターの感じは悪くないですよ」と現状を伝えてくれた。性格を問うと「基本的にはおとなしいですよ」と、豪快なイメージが強いオーナーと違い、こちらは“優等生”の模様。デビュー時期などは未定だが、14日からゲート練習を開始。順調なら早期デビューの可能性もあるという。
ここから調教の負荷なども上がり、故障のリスクなどもともなう競走馬。記者も無事を祈りながらデビューの日を待ちたい。
(中央競馬担当・戸田 和彦)