◆スプリンターズS追い切り(25日、中山競馬場)
秋のG1シリーズ開幕戦、第58回スプリンターズS(29日、中山)の追い切りが25日、各地で行われた。香港馬ビクターザウィナーは中山競馬場の芝コースで俊敏な加速を見せ、初コンタクトのモレイラは好感触だった。
不安が一つ、ハッキリと消えた。香港馬ビクターザウィナーは中山競馬場の芝コースで、初コンビのモレイラを背に追い切った。トップギアに入った残り800メートル付近から馬なりのまま馬場の6分どころをパワフルに駆け抜け、4ハロン54秒7―11秒6をマーク。前進気勢も旺盛で状態の良さは疑いようがない。
香港にあるシャティン、ハッピーバレーの2つのコースは、ほぼ平坦。今回、最も注目していたのは直線にそびえる高低差2・2メートルの坂の走りだった。直線の高低差が2・0メートルある中京の高松宮記念で3着に敗れた後、当時の鞍上リョンは「坂で余力がなかった」とコメント。大きな課題だと思っていた。
しかし、この日は一切スピードを落とすことなく楽々と上り切ってゴール。苦手な印象は受けなかった。シャム調教師の「賢い馬で、高松宮記念で一度経験したことでうまく対応してくれる」という言葉通り、春よりも一段階、進化した姿を見せていた。
高速馬場への対応、逃げ馬との兼ね合い。ほかにも乗り越えるべき壁は多いが、何より心強いのはモレイラの存在だ。トレーナーは「彼が乗ってくれることがストロングポイント」と余裕の笑み。中山の芝コースで通算27走し勝率55・6%を誇る“マジックマン”の手綱さばきに全幅の信頼を寄せる。
鞍上も「非常に感触が良かった。勝つ資格がある馬だと思う」と力強くコメント。報道陣からの「日本の芝1200メートルではG1を勝っていないが」という質問には、苦笑いを浮かべ「世界中で1200メートルを勝っているので」と、自身の腕への誇りをのぞかせた。
ロマンチックウォリアーの安田記念Vの衝撃から4か月。再び香港から来た“ウィナー”が誕生しそうだ。(角田 晨)