◆凱旋門賞・G1(10月6日、仏パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)
JRA海外馬券発売対象レースの第103回凱旋門賞・G1は10月6日、パリロンシャン競馬場で行われる。武豊騎手(55)=栗東・フリー=は、G12勝のアイルランド調教馬アルリファーで11度目の参戦。現地で1週前追い切りにまたがって好感触を得たレジェンドが、日本人ジョッキー初の快挙へ高鳴る胸の内を明かした。(取材・構成、水納 愛美)
思いは誰よりも強い。日本競馬のレジェンド・武豊の凱旋門賞挑戦は、今年で11回目を迎える。
「楽しみ。ワクワクするね。ヨーロッパでも10回乗った人って少ないんじゃない? 55歳になってこんなにワクワクできるなんて、ありがたい」
初挑戦は弱冠25歳だった94年。英国馬ホワイトマズルとコンビを組み6着だった。
「(当時は)よく分かってなかったよね。ヨーロッパでの経験は少なかったし、(パリ)ロンシャンもほぼ乗ったことなかった。あのときと今では全然違う。30年の経験が今はあるので、戸惑うことはもう全くない」
挑み続けるうちに、徐々に手応えは深まった。
「明確な目標。昔は夢って感覚だったけど、今は目標って言う方がしっくりくる。夢って言うと、ちょっと遠い感じがする。そんな感覚でもない」
今回の参戦は友情の結晶でもある。騎乗する愛国のG1馬アルリファーは、20年来の親交があるキーファーズの松島正昭代表が共同所有。この夏にオファーを受けた。
「セレクトセールのときにそういう話が少し出て、そうなればすごい話だなとは思ってた。今年は(22年に挑戦した)ドウデュースが国内と決まって、乗るのは厳しいかなと、僕自身思っていた」
松島代表は「武豊騎手が凱旋門賞を勝つのが夢」と公言してきた。
「執念を感じる。一緒に夢をかなえたい。松島さんの気持ちもすごく感じているので、それに応えたい」
先週は愛国に渡り、アルリファーの1週前追い切りにまたがった。初コンタクトで、しっかり好感触をつかんだ。
「強い追い切りではなく、軽いところでしたが、おとなしくて、乗りやすそうな馬。体調はよさそうで、いい感じでした」
日本人騎手も日本調教馬も未勝利。今回、武豊が勝っても、片方の悲願はお預けとなる。
「みんな『今年はあんまり、ヨーロッパの方もそんなに強いのいないですね』って言うけど、いや、俺ヨーロッパの馬やから(笑い)。日本調教馬の悲願を阻止するかもしれないけど、応援していただけたらうれしい」
今年は前哨戦で1番人気馬が敗れるなど混戦ムード。ベルリン大賞覇者のアルリファーも、有力候補の一角だ。
「(短期免許で来日中の)シュタルケは、あのレースに乗ってた(テュネスで5着)けど、アルリファーは強かったと言っていた。化け物はいないな。エネイブルとかトレヴみたいな」
数々の金字塔を打ち立ててきた名手が30年間、渇望してきた“凱旋門賞ジョッキー”の称号。
「機は熟しすぎてますよ。熟れ熟れや(笑い)。(日本人で)最初でも後でも、自分が勝てれば。でも早い方がいいかな。だって今のところは誰もしてないから、そりゃ最初が一番いいよね」