菊花賞が行われた10月20日、新潟に転勤している馬友からLINEがきた。「来年のG1馬が出るぞ」。そのメッセージを受け取ってすぐに思い出したのが、語り継がれる「伝説の新馬戦」だ。
2008年10月26日、オウケンブルースリが菊花賞を制する約3時間20分前に行われた京都5R・2歳新馬(芝1800メートル)。1着のアンライバルドはのちに皐月賞を制し、2着リーチザクラウンは重賞2勝、3着ブエナビスタはG1を6勝、4着スリーロールスは菊花賞を制覇、5着エーシンビートロンはJpn3のサマーチャンピオンを奪取。掲示板に載った5頭すべてが重賞ウィナーになった、まれにみるハイレベルな新馬戦だった。
菊花賞当日に行われる京都・芝1800メートルの新馬戦は毎年、有力馬が多く出走し、08年を初め、09年のローズキングダム、12年のエピファネイア、18年ワールドプレミア、20年シャフリヤールと大物が出ている出世レースである。今年は武豊騎手騎乗のヤマニンブークリエ(牡2歳、栗東・松永幹夫厩舎、父キタサンブラック)が勝ったが、今後も目が離せない一頭になったと言えるだろう。
「5連単があったら大もうけだったんだけどな。パドックを見たらすぐ分かった。新馬戦は今でもパーフェクト予想に近い」と自称“新馬戦マイスター”の馬友はうそぶくが、確かに難解極まりない競馬予想のなかにあって、新馬戦だけはのちのG1馬と未勝利馬が対戦するレースでもある。2歳だけに不確定要素が多く一概には言えないとはいえ、力差は明確。極端に言えば、それに近い予想はできる可能性はあるのかもしれない。
私も新馬戦を取材、予想するのが好きである。毎年、北海道シリーズの函館、札幌で取材するのが楽しみなのも、デビュー前の東西の2歳馬が一緒になって調教しており、取材をすればするほど当たる? いや当たる気がするからだ。今年も函館でマジックサンズに本命を打って勝利し、続く札幌2歳Sも制したことで財布が潤った。
函館・芝1800メートルもソダシ、レガレイラなど大物が出現するレースで来年以降も注目してほしいが、マジックサンズが勝った新馬戦も、10頭中5頭がすでに勝ち上がっている。重賞ウイナーになるかは分からないが、出走した馬は気にしていきたいと思う。
G1シリーズで盛り上がっているが、その裏で来年に向けた戦いも繰り広げられている。今週は10月26日の東京5R・芝1600メートルで、G19勝を挙げたアーモンドアイの初子アロンズロッド(牡2歳、美浦・国枝栄厩舎、父エピファネイア)、同27日の東京5R・芝2000メートルには3冠馬アパパネの子アマキヒ(牡2歳、美浦・国枝栄厩舎、父ブラックタイド)が、いよいよデビューを迎える。新たな伝説の始まりを期待して、今週も新馬戦に注目したい。(中央競馬担当・松末 守司)