勝負の3年目の秋を迎えた菊沢一樹騎手(21)=美浦・菊沢厩舎=。開幕週の中山で土曜の紫苑Sはホクセンジョウオー、日曜の京成杯AHはダイワリベラルと、2年半で重賞騎乗2度の男が2日連続で重賞に騎乗する。
「こういう舞台を任せてもらえたのは本当にうれしい。前向きで素直。徐々に成長していますし、上り調子なので一発狙っていきたいですね」
2連勝中のホクセンジョウオーの勢いに、自然と言葉が弾む。しかし、人馬ともに波乱万丈だった。ダートの新馬戦はタイムオーバーで、15、14着と迎えた3戦目。そこで敗れれば、抹消して岩手競馬に移籍するプランもあったが、初コンビで見事に逃げ切ってみせた。
「1勝してくれてよかったな、と。僕もけがから復帰した日だったので、あの1勝は自分にとっても大きかった」
20勝を挙げた昨年から飛躍を誓った今年は苦難の連続だった。1月27日の中京での落馬で1か月半の戦線離脱。復帰したが、すぐに4月15日の福島では故障馬のあおりを受けて、またも落馬。4週後に復帰した5月12日の新潟で勝利を挙げたのが、15番人気のホクセンジョウオーだった。
「けがを2回しましたし、心機一転、何かを変えないとな、と思って」。5月からは初めて栗東に拠点を移し、夏は北海道シリーズに参戦した。
「栗東はいいきっかけになりましたね。心新たに臨める心境もよかったです。久々に美浦に帰ってきたら、新鮮な気持ちになれた。札幌競馬を経験したのもモレイラさんたちと戦えて、勉強になりました。結果は出しづらい競馬場ですけど、プラスになりました」
日曜の京成杯AHは自厩舎のダイワリベラルで参戦する。
「力はあるのですが、難しいところがあるので、試行錯誤しています。馬に合わせた乗り方をしたい。惜しいところで強い馬に負けている。この馬が主役になる時が来るように頑張ります」
ひと山もふた山も乗り越えて臨む秋競馬。最後は人なつっこい笑顔に変わった。
「中山、楽しみですね。ギャフンと言わせますよ。ハハハ」
すでに重賞勝ちを決めている木幡巧、豪州で腕を磨く坂井、そしてJRA女性最多勝騎手となった藤田菜七子。同期に負けないアピールのチャンスが巡ってきた。(石野 静香)
◆菊沢 一樹(きくざわ・かずき) 1997年8月27日、茨城県生まれ。父で元騎手の菊沢隆徳調教師の厩舎に所属。叔父は横山賀一元騎手、横山典弘騎手。