◆第79回桜花賞・G1(4月7日・芝1600メートル、阪神競馬場)
牝馬クラシック第1弾の第79回桜花賞・G1は7日、阪神競馬場で行われる。注目は昨年の最優秀2歳牝馬で、現在4連勝中のダノンファンタジーだ。スポーツ報知では、管理する中内田充正調教師(40)=栗東=にインタビュー。同馬の現状や特徴、全国トップタイの20勝を挙げる厩舎の強さの秘密、絶大な信頼を寄せる川田将雅騎手(33)=栗東・フリー=について聞いた。
―ダノンファンタジーは昨年の阪神JFを制し、最優秀2歳牝馬のタイトルを獲得しました。そして今年、始動戦のチューリップ賞を快勝。この2戦を振り返ってください。
「阪神JFは道中の位置取りは後ろ過ぎるかな、と思ったけど、うまくいい脚を使って勝ってくれました。チューリップ賞は直線半ばで前が壁になったけど、こちらが見ていても焦る感じはなかったです。スペースができて抜け出すときの脚は速かったです」
―昨年からの成長度は。
「2歳から3歳にかけて、順調に成長していると思います。調教でコントロールの部分で難しいところは残っているけど、競馬に行ってからはコントロールが利いていたことが、成長分の表れだと思います。それはメンタル面の成長でしょうね。体重の数字はあまり変わっていなくて、冬毛もまだ長かったのですが、体つきが3歳馬らしくなってきました」
―この馬の強さについて教えてください。
「レースセンスが高く、学習能力が高い。そして競馬が上手な点がいいところですね。トライアルでは正攻法の競馬をして、ジョッキーがうまく教育してくれました。次は多頭数にもなりますし、どこの枠を引くかも分からないので、どこからでも競馬ができるようになったことが桜花賞につながってくれたら、と思います」
―先月27日に行った桜花賞の1週前追い切りは、川田騎手が栗東・CWコースで騎乗して6ハロン78秒3―12秒9。馬なりでスピードに乗って走りました。
「前走後、順調に調整できているのが何よりです。今年2戦目で、状態は上がっています」
―次は中内田師のキャリアについて教えてください。アイルランド、英国で馬学を学び、米国ではRフランケル調教師に師事し、エンパイアメーカー(GI・3勝、現種牡馬)などの調教に携わりました。07年4月に栗東トレセン入り。橋田満厩舎の調教助手になり、12年に調教師免許を取得後は技術調教師として、藤原英調教師の下で修業しました。
「海外だけではなく、今までの経験がどこかには生きていて、つながってきていると思います。橋田先生にすごくかわいがってもらい、いい経験をさせてもらいました。技術調教師として藤原英厩舎に携われていた期間は、純粋に楽しかったです。エイシンフラッシュ、トーセンラーの調教にも騎乗し、いい勉強ができました。すごいと思った人、馬は多すぎて、絞ることができません」
―調教でいつも自ら騎乗するスタイルが印象的です。厩舎は先週で20勝に到達。今年も好調ですが、厩舎の強さの秘密は?
「厩舎の強さというよりも、オーナーにいい馬を預けていただいていることに尽きます。それと、厩舎スタッフが頑張っていること、トレセンに無事に戻していただいている近隣の育成牧場とのチームワークが結果に結びついているのだと思います」
―中内田師が競馬の世界を目指すようになったきっかけは?
「実家が牧場だけど、馬には全く興味がなかったんです。普通に自転車に乗ったり田んぼで遊んだり、そういう田舎の少年でした。競馬が好きになったきっかけはオグリキャップです。小学校6年生のとき、天皇賞(秋)、ジャパンCで負けて、終わったと思われていた馬を復活させました。(武)豊さんの腕か、もっと深いドラマがあったのか。その走り自体に衝撃を受けました。そこから父(克二さん)に頼んで馬に乗せてもらい、競馬の道を志すようになりました」
―ダノンファンタジーとコンビを組む川田将雅騎手は、中内田厩舎の172勝のうち57勝を挙げる主戦です。少年の頃からの縁だと聞いています。
「馬主をしていた祖父(行雄さん)が佐賀の川田孝好調教師(川田の父)のところに馬を預けていて、川田騎手が小学校6年生の時に信楽牧場(中内田調教師の実家)に滞在しました。それが出会いです。海外に修業に行っていたときはエアメールで文通をしたこともあります。年齢が離れて(中内田師より7歳下)いて、かわいい弟分という感じがしますね」
―その川田騎手は今年、45勝を挙げて全国リーディングを独走しています。
「今の活躍は本当に素晴らしいですね。以前から腕は確かだったけど、競馬に対する真剣な向き合い方も素晴らしい。お父さんからの教えなんでしょうね。しっかりしています。ジョッキーとしてもだけど、厩舎チームの一員としてきっちり勝たせてくれるという信頼があります」
―川田騎手は中内田厩舎のダノンプレミアムの主戦でもあります。金鯱賞での復活Vはお見事でした。
「復活できたのは装蹄師をはじめ牧場、厩舎スタッフ、ジョッキー、馬に関わった人すべてが協力し合ってのもの。とにかく反響がすごかったです。目立ったのはその1戦だけど、他にもドラマはあります。重賞ばかりでなく未勝利を勝つのにも。もちろん、桜花賞のダノンファンタジーにもドラマはあると思います」
―最後に、桜花賞で最大のライバルとなる馬は?
「どれとは言わず、全頭がライバルです。今は目の前のレースのことだけを考えています。当日まで無事に持っていければ。本当に何事もなく、いい状態で送り出したいです」(聞き手・内尾 篤嗣)
◆中内田 充正(なかうちだ・みつまさ)1978年12月18日、滋賀県甲賀市信楽町生まれ。40歳。07年から橋田満厩舎の調教助手になり、12年に調教師免許を取得。14年3月開業。重賞はダノンファンタジーの阪神JF(18年)、ダノンプレミアムの朝日杯FS(17年)のG1・2勝を含む13勝。17年にJRA賞・最高勝率調教師を獲得。開業から史上最速100勝(3年7か月15日)を達成。家族は妻と1女。血液型A。