◆第166回天皇賞(秋)・G1(10月30日、東京・2000メートル)
天皇賞・秋(30日、東京)は、牝馬が侮れないG1だ。19、20年にはアーモンドアイが連覇し、昨年のグランアレグリアなど近3年の3着馬はすべて牝馬。今年はマリアエレーナの一発だ。「母を訪ねて~母系血統チェック」ではタフな東京でこその牝系に注目。25日の厩舎恒例の火曜追いでも栗東・CWコースで力強い動きを披露し、態勢は早くも整った。
名牝の血を、確かに受け継いでいる。マリアエレーナの曽祖母ブロードアピールは、強烈な末脚を武器に芝、ダート両方で重賞6勝。特に、絶望的な位置から豪脚で追い込んだ00年の根岸Sは“伝説”とも言われている。
自身と母、2代母の両親がいずれも金子真人氏の所有馬という、“金子ブランド”の結晶だ。母テンダリーヴォイスは重賞勝ちこそないが、オープンのアネモネSを勝利。桜花賞と秋華賞にも参戦した、世代上位の1頭だった。さらにその弟ワグネリアンは、18年の日本ダービーを制覇。ブロードアピールの根岸Sもダートとはいえ、東京コースだったから、名うての左回り巧者を輩出する牝系とも言える。
マリアエレーナは今回が府中初参戦だが、すでに左回りの中京、新潟で計3勝の実績。初コースはむしろプラスだろう。また、ブロードアピールは6~7ハロンが主戦場だったが、昨夏から距離を延長。前走の小倉記念(2000メートル)でついに重賞初Vを果たした。距離適性はむしろワグネリアンに近い印象だ。
高島助手は「折り合いを欠きそうな雰囲気があったが、徐々に大人になってきた」と強調。現在は先行策だが以前は切れ味勝負型で、「ブロードアピールのすごい脚も少しは受け継いでいるのかな」とも指摘しており、3代母とワグネリアンとの両方の特長を兼備している特注馬だ。
25日の吉田厩舎恒例の火曜追いでも、母系から受け継いだ瞬発力とスタミナを発揮した。栗東・CWコースで少し気合をつけられただけで、ラスト2ハロン11秒7―11秒4。6ハロンも82秒1と優秀で、高島助手は「最後は軽く促して、反応を確かめた。小柄だけどしっかりした背中で、体幹が強い」とうなずいた。
G1初挑戦となる天皇賞・秋は、因縁のレースでもある。父クロフネは01年に参戦を目指したが、外国産馬出走枠が2頭しかなく、賞金順で除外された。「お父さんの無念を晴らしてほしい。勝負になっていいかなと思う」と高島助手。偉大な先祖を味方に、牡馬の強敵に立ち向かう。(水納 愛美)