【日本ダービー】タスティエーラ、皐月賞2着から逆転V レーン騎手は69年ぶり「テン乗り」制覇

◆第90回日本ダービー・G1(5月28日、東京競馬場・芝2400メートル、良)

 第90回日本ダービー・G1は28日、東京競馬場で行われ、4番人気の皐月賞2着馬タスティエーラが、断然人気の皐月賞馬ソールオリエンスの追い上げを首差退け、世代の頂点に立った。テン乗りでの制覇は69年ぶり、4度目で、ダミアン・レーン騎手(29)=豪州=は雄たけびを上げて歓喜。堀宣行調教師(55)=美浦=は15年ドゥラメンテ以来の2勝目を、自身が管理し、同年3着だったサトノクラウンの初年度産駒で挙げた。

 節目の年にふさわしい新たな光景と歴史が刻まれた。勢いよく坂を駆け上がったタスティエーラは残り200メートル付近で先頭に立つと、レーンの豪快なアクションに応え脚を伸ばし続けた。最後は外から迫る皐月賞馬ソールオリエンスを首差で退け、鞍上は雄たけびを上げて感情を爆発させた。「考えていた理想のレースができた珍しいパターン。何より特別な勝利」。オーストラリアの若き天才が無敗2冠の野望を打ち砕いた。

 日本ダービー初制覇のウィニングランを終えて検量室前に引き揚げると、祝福する関係者のなかに今年1月に結婚したボニー夫人の姿があった。先週末に来日したばかりで、「日本に来てこんな思いができて、すごいうれしい」と熱いキスを交わした。テン乗りでのダービー制覇は1954年のゴールデンウエーブの岩下密政以来、69年ぶりと知らされた29歳は「正直知らなかったし、知っていてもジンクスは信じていないので」と、涼しい顔で不敵に笑った。

 完璧なエスコートだった。好発を決めて好位4番手で折り合い、脚をためて直線へ。抜け出してから気を抜くメンタル面の課題があったなかで、最後まで集中して走り抜き、レース中に左前脚を落鉄しながらの栄冠だった。3週連続で追い切りに騎乗した鞍上は「(堀調教師の)話を聞いたうえで、先頭に立ったらとか調教のシミュレーションなどよく話をしてきた」と、入念な意思疎通が奏功。ともにサリオスで挑んだ20年のダービー2着の雪辱を果たした。

 父サトノクラウンも手がけた堀調教師にとっては、初年度産駒での快挙に喜びもひとしおだ。15年のドゥラメンテ以来、2度目のダービー制覇は、攻めの姿勢が実を結んだ。「この馬に限らず若馬にとっては、フィジカル面はもちろんだが、メンタル面、経験が非常に重要」と堀師。共同通信杯4着から中2週の報知杯弥生賞ディープインパクト記念を勝利し、皐月賞2着後は普段の放牧先である滋賀・ノーザンファームしがらきではなく、輸送の負担が少ない福島・ノーザンファーム天栄で調整するなど手を尽くした。

 秋に向けて夢はさらに膨らむ。馬主のキャロットファーム・秋田博章社長は「皐月賞と明らかに違いましたね。(秋の目標は)2択でしょうね。菊花賞か天皇賞・秋か」と、青写真を描いた。名門厩舎の執念がジンクスを過去のものにしてみせた。(坂本 達洋)

 ◆タスティエーラ 父サトノクラウン、母パルティトゥーラ(父マンハッタンカフェ)。美浦・堀宣行厩舎所属の牡3歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算5戦3勝。総獲得賞金は4億8232万9000円。重賞2勝目。主な勝ち鞍は、23年報知杯弥生賞ディープインパクト記念・G2。馬主は(有)キャロットファーム。

レーンに導かれたタスティエーラ(左から5頭目)が第90代ダービー馬に輝いた
レーンに導かれたタスティエーラ(左から5頭目)が第90代ダービー馬に輝いた

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