【ケンタッキーダービー】世界のYAHAGIの自信「今年は明確に勝ち負けを意識」フォーエバーヤングで歴史作る

弟子の坂井(馬上)とフォーエバーヤングを信頼して送り出す矢作調教師(写真は3月28日のUAE・メイダン競馬場)
弟子の坂井(馬上)とフォーエバーヤングを信頼して送り出す矢作調教師(写真は3月28日のUAE・メイダン競馬場)

 JRA海外馬券発売対象の第150回ケンタッキーダービー・米G1は現地時間4日(日本時間5日)、チャーチルダウンズ競馬場で行われる。無傷5連勝中のフォーエバーヤングを送り出す矢作芳人調教師(63)=栗東=は「明確に勝ち負けを意識」と日本調教馬の初制覇へ手応え。

 この場所だけを見つめてきた。矢作調教師は昨年、コンティノアールが現地入り後に左後肢の歩様が乱れ無念の出走取消。今年は無傷5連勝のフォーエバーヤングと2年越しの参戦を果たす。「去年は『参加することに意義あり』というイメージ。今年は明確に勝ち負けを意識しています」と力強く言い切った。

 目先の勝利よりも大きな夢を選んだ。1月上旬。藤田晋オーナーと先のプランについて話し合った。国内には今年から創設されたダート3冠路線もある。しかし、トレーナーは視線を世界へ向けた。「海外の大きなレースを勝った方が種牡馬価値は上がる。オーナーには『それだけの器だと思う。国内に収まる器ではありません』と伝えて、同意してもらった形です」。その最大目標こそ、ケンタッキーダービーだった。

 強い師弟の絆で挑む。鞍上は厩舎所属の坂井瑠星。「真摯(しんし)な努力と絶対にトップを取るんだという意思を強く感じる。若い頃の俺に似ているのかなとは思う」と、かつての自分とダブらせる。先週は米国で1週前追い切りにまたがった後、週末は京都と香港でプレー。今週は1日の船橋でかしわ記念に騎乗してから、再び海を渡る。「ステッキ一本で世界中どこで依頼を受けても行ける。瑠星と『俺たちはこれを目指していたんだもんな』と言ってるんだよ」とうれしそうに笑う。

 条件は楽ではない。ドバイからベルギーを経由してのアメリカ入り。到着後に42時間の着地検疫を受けた後、馬運車による10時間近い輸送で、ようやく決戦の地に着いた。「疲れない方がおかしい。一度、状態が落ちるのは想定内」と説明する。

 過去149回で米国調教馬以外の勝利は1971年のキャノネロ(ベネズエラ)一度のみ。「壁はめちゃくちゃ高いよ」。そう口にしながらも、逆境でこそ燃える勝負師の瞳が輝く。「いかに競馬の日まで状態を上げられるか。今はその一点です。状態さえ上げれば、能力的には通用すると思っています」。世界のYAHAGIが再び歴史を塗り替える。(山本 武志)

ルーツ作った亡き父の存在

 矢作調教師は偉大な“師匠”との悲しい別れがあった。フォーエバーヤングがUAEダービーを勝った3月30日。父で大井の元調教師だった和人さんが90歳で亡くなった。

 高校卒業後。競馬の世界に入ろうとした時、その条件として出されたのが海外で馬の勉強をすることだった。まだ、ジャパンCが創設される前のこと。「地方の調教師だったけど、そういう(国際化の)時代が来ると予見していた。すごいな、と」。男と男の約束を守り、20歳で単身オーストラリアに渡った。

 約1年の武者修行が「世界のYAHAGI」のルーツになっている。「豪州に行ったことで今がある。普通の人よりフットワーク軽く海外に挑戦できるというのは、あれが全てだと思います」。亡き父は世界を股にかけて戦う孝行息子の姿を、天から温かく見守っているはずだ。

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